光へと至る道



かきん!と関平の刀が飛び、地に突き刺さる。
すかさず、振り上げられた敵兵の鋭い刃が関平を狙う。
それを見た咲良は思わず地を蹴り、関平に向けて手を伸ばした。
迷ってなど居られない、取り合えず今は、関平を引っ張って飛んで逃げよう、後は信長に任せれば良い、と。
だが…、とっさの判断は最悪な結果へと繋がった。


「咲良殿…!?」


咲良は関平を救うどころか、勢い余ってその場に押し倒してしまい、すぐさま次の行動に移すことが出来なかった。
仰向けに倒れる関平に覆い被さる形で、咲良の背に凶器が振り下ろされる。
絶望的な状況に、咲良は泣きそうになりながらもぎゅっと関平にしがみついた。

…ゲームとは違い、現実はリセットが出来ない。
でも、夢から覚めるだけだと思ったら、何も怖いことはないはずだ。
だが即ち、それはこの世界での死に等しい。
役目を果たすまではまだ、死ぬことは出来ないのに!


「なっ!?何だ!刀がはじかれるぞ!?」


咲良は敵兵の叫び声に反応し、慌てて顔を上げた。
ぽかんとした顔で、驚く関平が目に入る。
確かに刃は当たったはずなのに、痛みも衝撃も感じなかった。
よく見てみれば、太公望の羽衣がふわふわと漂い、咲良と関平を守るようにして、空中で揺らめきながら煌めいていたのだ。


「そ、其処の女、何者だ!」


攻撃を無効果する羽衣の力を前にして、少なからず敵軍勢は動揺したようである。
雨に混じって何本もの矢が降ってくるが、それさえも羽衣は次々と弾き飛ばす。
この羽衣は人間を浮遊させるだけではなく、バリアのような役目も果たしてくれるらしい。
…太公望は、自身の失敗を帳消しにするために羽衣を授けたのではなく、心から咲良の身を案じていたのだろうか。

それまで呆然としていたはずの関平は、我に返って刀を拾い、同じく呆けている咲良を肩に担ぐと、拠点の壁際の隙間に押し込めた。


「かかっ、関平さん!?」

「感謝致します。後は拙者にお任せを。あと、目を閉じていた方が宜しいかと」


慌てる咲良を後ろに庇い、関平は瞳に闘志を宿し、次々と敵兵を薙ぎ倒していく。
周囲に血が飛び散り、間近で惨劇を目撃してしまった咲良は、恐怖に縮こまりながら、言われた通りに固く目をつむり、耳を塞いだ。
この過酷で悲しい現実が過ぎ去るまで、関平に全てを任せるしかなかった。

容赦なく降り続けた雨が弱まった頃、この瞬間を待っていたかのように、敵兵が撤退を始める。
織田信長が敵総大将を打ち破ったとの報が入ったのは、それからすぐのことだった。


 

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