神聖な敷居



「初めましてじゃな、咲良とやら」

「あ、はっ、初めまして…!」

「そう固くならずとも良い。女禍の言うことは全て真実じゃ。わし達はとある仙人の残した予言を危惧し、世界のために行動したまで」


同じく仙人の伏犠は、女禍の夫とも兄とも言われる存在だが、無双での二人の関係ははっきりと明言されていない。
その伏犠が言う、予言とは何であろうか。
ここまで来てしまえば、まるきり別のゲームではないか。
勿論、こんなシナリオは用意されていなかった。


「予言の中身はこうじゃ。【盤古再臨の時、悠久なる者、道を想像せし。涙を名に持つ者、道を創造せし。彼の者等が会い見えし時、久遠劫の旋律で世の静寂を取り戻さん】とな」

「えっ、あの、それは確か…孫策様が黄蓋様に宛てた手紙の内容で…」

「小覇王が予言を知っていたのは当然じゃ。この予言はあやつが…わし達と同じ仙人だった頃の小覇王が読んだものだからな。現在に至るまで、奴は久遠劫の旋律を唯一知る人物であったのじゃが…旋律は静寂、世の混沌を呼び起こすものと決めつけられ、予言自体が破滅を伝えるものと危険視されていたのじゃ。やつは惨めな思いをし、仙界から消えていった…」


小覇王…、今は亡き孫策が。
それこそ、簡単には信じられない話だ。
孫策の前世は仙人だったというのか。
勇ましい猛将と仙人が結び付かず、咲良はさらに頭を悩ませてしまう。

予言を、孫策は遺書として残していた。
涙の奏者が悠久なる者に出会い、特別な旋律を奏でることになると。
これまで、その意味は多様に解釈された。
孫策の前世であった仙人は、世が混沌が陥ると予言をしたことを咎められ、さらに生まれ変わってからも、太公望達の手により孫策は殺されてしまった。


「悠久とは、世の道を創造した神…つまり、盤古のことを指すんだよ。あまりその名を口にすることは褒められたことではなくてね。だから仙人は皆、盤古を悠久と呼んでいるんだ」

「そもそも盤古って…、それじゃあ蘭華さ…、い、いえ…女禍さん、私は本当に、遠呂智を眠らせる子守歌を奏でられるってことですか?」

「ふ…、女禍と呼ぶか。咲良が気を使う必要は無かったのだがな…ならば私も口調を正そうか」


ふっと冷たく笑った女禍からは、蘭華の面影は完全に消えてしまった。
態度を改めること自体が、余計なお世話…だったのだろうか。
少し寂しく感じたが、二人を同一視出来ない今、変な違和感を覚えるぐらいならば、女禍として接した方がまだマシだ。


 

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