輝ける言葉



「…孫権様は突然…俺の服を脱がせ…抵抗も許されず…」

「す、凄く酔われていたんですね…」

「…初めは…お戯れかと…。ですが孫権様は…俺の体にある傷全てを…逐一説明なされて…」


周泰が孫策に召し抱えられた当初は、それこそ風当たりが冷たかったのだろうと、咲良にだって容易に想像出来る。
所詮、水賊上がりのくせに、何故重用されるのかと…周泰は常々周囲から疎んじられていたのだと言う。
妬みだと分かりきっているし、元より周泰は、そのような非難を気にするような男ではない。

それでも、孫権は。
周泰に絶大な信頼を置く孫権だけは、周泰が悪く言われる事実が耐えられなかったのだ。

年若い主の意図の掴めない行動に呆然とする家臣達の前で、孫権は真剣な顔をして、周泰の傷痕の説明をした。
孫権は周泰の体に残る傷のほとんどを知り尽くしていたのだ。
その全ては、孫権を危機から救うために負った傷…、言わば周泰の忠義の証である。

周泰は無口だから何も言わないが、これほど酷い傷を負っているというのに、泣き言一つ口にせず孫呉のために尽力し、誰よりも誠実に、忠誠を誓っているのだと。
酷く酔っぱらっていながらも必死になって訴えかける孫権の言葉が、隠れて周泰の陰口を言っていた将達の胸に響かないはずがない。

そして、主の深い信頼を感じた周泰も、それまで以上の強い想いを抱き、必ず孫権を守り通すと決意したことだろう。


「…後日…、孫権様は…綺麗に忘れられたようですが…」

「酔っていらしたからこそ、本音を仰られたのかもしれません。孫権様は…周泰さんのことが、大好きなのでしょうね」

「…俺が…好き…」


周泰にとっての孫権は、誰よりも大切な、かけがえのない存在なのだ。
思い出を…、孫権の気持ちを大事にしているのが伝わってくる。
ゲームを通して彼らの姿を見ていた咲良には、二人が互いに信頼し合っている…、それは間違い無いことだと思っていた。
だが実際に、周泰と話してみて…彼の孫権への想いは確かなものだと分かり、胸の奥があたたかくなったような気がする。
そして、口下手な周泰が一生懸命になって、話を聞かせようとしてくれたことが…、咲良には嬉しく感じられたのだ。


「…貴女が…」

「え?」

「……、いえ…何でもありません…。次は…どのような話をお望みですか…?」


何か聞きたいことでもあったのか、周泰は途中で言いかけてやめてしまったので、咲良は驚いて瞳を瞬かせる。
その先に続く言葉が想像出来ず、ちょっと考えてしまったが…咲良は疑問を振り払うように笑顔を浮かべ、孫権様との素敵なお話を、と明るく返事をした。


END

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