輝ける言葉



「…しかし…一体何を話せば…?俺の過去は…とても…聞かせられたものでは…」


水賊…江賊とも言うのだろうか。
咲良は詳しく知らなかったが、それは海賊のようなもので…、かつての周泰は、悪い行いをしていた。
忠魂義胆というような現在の周泰からは想像も出来ない事実である。
だが、周泰にとって葬り去ってしたい過去の過ちならば、自らに語らせるのは酷なことかもしれない。


「じゃあ…、最近のお話でしたら平気でしょうか?無理でしたら諦めますが、残念です…」

「……、」


自分勝手に期待をしては周泰を悩ませるだけかもしれないが、困ったような彼の反応が見ているのが、少しだけ、楽しくなってきた。
僅かないたずら心が芽生えてしまった咲良は、目を伏せ…子供のような、それらしい仕草でアピールをしてみた。
だが、周泰は変わらず黙りこくっている。
何の反応も示されないと逆に恥ずかしくなってくるが、周泰は口をぱくぱくさせ…、咲良以上に恥ずかしがっているようにも見える。


「…最近の…話でも宜しければ…」

「えっ、聞かせてくださるんですか?」

「…あまり…御期待せずに…」


このようして、咲良は周泰の話を聞くことが出来たのだった。

つまらない話だからと散々忠告されたが、本音を言えば、内容はどうだって良かったのだ。
沈黙や、気まずい雰囲気は嫌だから、ただ、何か言葉が欲しかっただけで。
だけど、思いのほか喜んでいる自分が居る。
いったいどんな話?とわくわくしながら、咲良は周泰の顔を見つめた。


「…俺が…孫呉の将となり…数年が過ぎ…」


遠い過去の記憶を思い返し、周泰が語るのは、いつの日の記憶だろうか…、とある宴席で起きた出来事についてだった。
手の付けられない酒豪である彼の主・孫権が、人前であるにも関わらず仕出かした、ある意味では珍事件といった、その…大切な思い出を、周泰はゆっくりと紡いでいく。


 

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