定めの道の上



太公望は相変わらず自分勝手だし、諸葛亮は悠生が嫌だと言えないような言葉を的確に選ぶのだ。
左慈もまた、助言はするが、可能な限り太公望の自由にさせようとしている。

悠生が成長することで、蜀と阿斗の未来が明るいものとなる…その言い分は分かるが、ならば何故、阿斗の成長を望まないのだろう。
こんな時こそ、皆が阿斗を支えてあげなくては、孤独に怯えた彼は世界に絶望し、暗愚な劉禅になってしまうかもしれないのに。


「…阿斗に挨拶をする暇も、無いですか?」

「残念ながら…、伝言ならば、私から直接お伝え致しますが?」


諸葛亮は意図して、悠生と阿斗を引き離そうとしているのではないか。
もしかしたら、阿斗自身が望んだこと?
阿斗は笑っていたけれど…神様の生まれ変わりだなんて言われても、気持ち悪かっただろうか。
考えれば考えるほど、悪い方向に持っていってしまうのだ。
心が、弱いから。
すぐ傍にぬくもりが感じられないと、寂しくてたまらない。


(それでも…何があっても、信じるって決めたんだ)


深刻そうな顔をしてみせる諸葛亮を驚かせてやろうと、悠生はこの重々しい雰囲気にそぐわない笑みを浮かべた。
左慈が興味深げに視線を寄越すが、一泡吹かせたいのは諸葛亮の方だ。


「じゃあ…"この戦から帰ってきたら、僕と結婚してください"って、伝えてほしいです」

「結婚…ですか?劉禅様に?」

「はい!僕、阿斗のことが大好きなんです」


いったい何を言っているのかと、生真面目な軍師様は言葉通りに受け取ってしまったのか、眉間に皺を寄せている。
悠生はにっこりと微笑み、諸葛亮が困惑する様をひとしきり楽しんだ。
そして、親友がこの伝言を聞かされた時、どのような反応をするだろうかと想像したら…、悠生は可笑しくなって、小さな声で笑った。


 

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