定めの道の上



「ところで悠久よ、あの若き龍…趙雲将軍が雑賀の里へ向かうそうだが」

「はい、聞いています。家康さまが雑賀の里で戦っているから、その手伝いをしに行くんですよね」


逃亡した妲己と、伊達政宗が手を組んだ…、その報を聞いた家康が名乗りを上げ、太公望の協力の元、一軍を率いて政宗が潜伏する雑賀の里へ説得に向かったのだった。
妲己の本当の狙いは、時間稼ぎである…、そのために政宗は利用されているのだ。

以前から遠呂智に心酔していた政宗は、遠呂智が封印された後も、積極的に乱を起こしていた。
遠呂智こそが唯一、泰平の世を作ることが出来る存在だと信じて、盲目的になっている。
家康はどこまでも純粋な政宗を哀れみ、遠呂智の呪縛から解き放とうと、政宗と戦うことに決めたのだった。

趙雲は劉備の命を受けた魏延と共に、家康軍の手助けをするため、今日にも雑賀の里へ向かうことになっていた。
もうすぐ、出立の時間だろうか。
見送りには行こうと思っていたので、左慈に断りを入れようとした時、悠生を呼ぶ静かな声がした。


「ならば話は早いですね。悠生殿、貴方も趙雲殿に同行してください。出立の準備をお願い致します」

「諸葛亮どの!?え、僕も同行するって…そんなこと…」

「以前、太公望殿にご相談して決したことなのです。貴方の稀有な力を育てるためには、積極的に戦場へ連れ行くべきだと」


音も立てずに姿を現した諸葛亮は、困惑する悠生をよそに、淡々と話を進めた。
太公望と諸葛亮…、二人とも、軍師としては神の域に達しているであろう。
考え方が似ているからこそ衝突しやすいとも思えるのだが、意外なことに二人の意見は合致し、悠生の将来を非常に期待している。

諸葛亮は太公望と繋がりを持つ悠生を危険視し、異端者だと思いつつ、仙人とも変わらぬその力を蜀のために利用しようと、考えを改めたのだ。
それが聡明な臥龍の考えであればこそ、劉備も許可したのだろうが…


「小生も付き添おう。悠久を独りにする訳にはいかぬのでな」

「で、でも…諸葛亮どの、阿斗はお留守番でしょう?それなら、僕は行きたくないです。今、阿斗を残して行くなんて…」

「現在、劉禅様は体調が優れぬご様子…、戦場にはお連れ出来ません。しかしながら、悠生殿のお力を育てることは、未来の蜀のために…すなわち、劉禅様のためとなるのですよ」


 

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