果てしない鎖
「誰かに言われなくても分かっているのだ。私は、弱い…!大切なそなたを守ることだって出来ない!」
「……、」
阿斗は苦しげに声を絞り出した。
力があると指摘されても、子供だからと、その力を人のために使うことすら許されない。
悠生が太公望に連れて行かれると言われても、阿斗は喚くだけで、何も出来なかったのだ。
「あのね、阿斗…僕は、神様の生まれ変わりなんだって」
「悠生…?」
「名前も聞いたことがない神様だったけど、僕はその神様と同じ魂を持っているから、太公望どのは僕を気にかけてくれていたんだ」
悠生はあれほど明かすことを拒んでいた秘密の一つを、いとも簡単に話してしまった。
今、勇気を出して話さなければ…もう、機会は二度と訪れないような気がしたのだ。
悠生は少なからず神の力を受け継いでいたし、西王母の手助けもあってか、弓を手に戦うことが出来る。
改めて語られた事実に阿斗は驚いているようだったが、変わらずに、悠生の手を握っている。
「黙っていてごめんね…、でも僕は、まだ阿斗に話していないことがある…」
「…良い。そなたとて秘密にしておきたいことはあろう。だが、私はそなたが離れていくと思ったら…息が止まりそうになった」
「何処にも…行ったりしないよ。ずっと傍に居るって言ったでしょ…?」
阿斗は、強くなる。
いつの日か、秘めたる力を自分のものにし、強く優しい君主になってくれると、悠生はそう信じている。
(僕は阿斗と生きたいから。太公望どのと一緒には、行けません…)
身を案じてくれる太公望の気持ちを裏切る行為だとしても、これだけはどうしても譲れなかった。
悠生はそっと阿斗を抱きしめて、ぎこちなく笑った。
二人で一緒に大人になって、どんな苦しみにも負けない心を、育てていきたい。
まだ、言えないことはあるけれど、いつまでも傍に居させてほしいのだ。
END
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