果てしない鎖



「悠生殿が、太公望殿の弟子に?いつからそのような話を?」

「劉備将軍、長らく囚われの身であった貴公は存じ上げていないのだろうが、悠生は人の子とは異なる、気高き身の上であるのだ。…まあ、改めて語る必要もあるまい」


悠生の秘密を知る者は、ほとんど居ない。
盤古については、阿斗にだって話していないし、趙雲にさえ、悠生の生まれが未来の倭国であることを教えただけだ。
太公望は途中で話をやめてくれたが、悠生の存在に違和感を抱いた者は多いだろう。
阿斗が何か言いたそうだったが、悠生はわざと視線を逸らし、戸惑いを隠そうとする。


「悪しき敵の手に渡る前に、今すぐ悠生を安全な場所へ連れ行きたい…が、守るべき子が二人となれば、話は別だ」

「二人?」

「実は、劉備将軍…貴公の子も、今は未知数ではあるが、特別な力を秘めているようなのだ」


阿斗にもまた、秘められた稀有な力がある…
出会ったばかりの太公望だけが気付いたのだ。
だが悠生にも、思い当たることが無い訳ではない。


(阿斗は…そうだ、昔、アイテムになったことがあったっけ…)


無双乱舞を、60秒も続けることが出来る。
一気に現実に引き戻される話ではあるが、もし阿斗がアイテムと同じ能力を身の内に秘めているのならば、その力が敵の手に渡れば大変なことになるだろう。
恐らく、阿斗の能力とは、他人の力を何倍にも増幅させることが出来るのだ。
阿斗も敵に狙われる可能性があると知り、悠生も動揺を露わにするが、太公望の言葉に最も衝撃を受けたのは、阿斗だった。


「私に…力が…?私も、戦うことが出来ると?」

「…ゆえに、今少しの間、悠生を人界に置くことにするが…悠生は兎も角、御子よ、貴公が無闇にその力を引き出しては危険極まりない。幼き君は、身を守ることも出来ないのであろう?貴公はただ、大人に守られていれば良い」

「っ……!」


太公望の発言は、まさに正論であろう。
戦い方も知らない阿斗が力だけを得ては、敵を喜ばせるだけだ。
阿斗は悔しそうに顔を歪めると、悠生の手を取って、太公望の声が聞こえないところまで走り去った。


 

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