願う子の声を



趙雲の傍に居ると、自分が自分でいられなくなる。
少しずつ、心を通わせていくうちに、知らない自分を知っていった。
頬が熱くなって、胸が高鳴ってしょうがないのだ。
趙雲のことが、好きで好きでたまらない。
彼を愛して生きていられる、そんな今が幸せだった。



「うう…、う…」


悠生は苦しげに息を吐き、か細い声で呻いた。
昨日は一日のほとんどを趙雲の部屋で過ごしていた悠生だったが、今朝方から熱を出してしまったのだ。
自室に戻ってからも具合は悪くなる一方で、気付けば寝台から起き上がれないぐらいに体調を崩していた。
やはり、掛布も無しにうたた寝をしていたのがまずかった。
趙雲に風邪をうつしてはいないかと心配したが、逆に心配をかけたくはないので、話をしに行くことも叶わない。


「大丈夫ですか、悠生殿」

「ん……黄皓どの…?」


ぼやけた視界に、慣れ親しんだ笑顔を見る。
侍女に聞いて来たのだろう、いつの間にか傍に居た黄皓が、熱を持った額を冷やそうと濡れた手拭いを取り替えてくれた。


「ありがと…ございます…黄皓どの…」

「お辛いでしょう。喋らなくても良いですよ」


確かに、喉の奥が痛み、声を出すのも少し辛い。
いろいろなところから汗が噴き出し、呼吸も荒く乱れている。
こうやって黄皓に看病されるのも初めてではないが、迷惑をかけてしまうことが心苦しく、申し訳なかった。


「昨日、趙雲殿と過ごされていたんでしょう?邸に帰宅されてから趙雲殿は貴方を帰すまで部屋を出なかったとか…」

「はい…でも、お話していただけですよ?ちょっと、うたた寝しちゃったんですけど…」

「侍女が皆、こっそりと噂し合っていたんですよ。劉禅様のお耳には入っていないでしょうが…、貴方が体調を崩されたのは、もしや趙雲殿に…」


黄皓が何を言いたいのか察した悠生は、とんでもない、とぶんぶんと首を横に振った。
恋人である趙雲と長い時間を共にしたことにより、周囲の者に多大なる誤解を受けているようだが、言い訳や弁解を口にする元気も無かった。
それに…あながち間違ってもいないだろう。
最後の一線は越えていなくとも、趙雲と深く触れ合っていることは事実なのだ。

取り敢えず否定はしてみるものの、羞恥と困惑に口を噤んだ悠生を見た黄皓は苦笑し、「からかってみただけですよ」と続ける。
彼の表情には裏が無く、嫌みや妬みから言ったのではないことはよく分かる。


 

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