天へと向く心



「ま、待ってくれ…悠生殿…私はこれ以上…貴方に触れられないのだ」

「え?」

「貴方が大人になるまで触れてはならないと、これまで自分を戒めてきたが…、貴方の色香に狂わされてしまいそうだ…。しかし今、成長途中の悠生殿を抱いてしまえば…私は抑制することもかなわず、壊してしまうかもしれない」


初めは意味を取り損ねてぽかんとしていた悠生だが、趙雲が緊張していることだけは伝わった。
変なところで、生真面目な人だ。
大人には、子供には分からない難しい事情があるのだろう。
この場で抱かれる覚悟で身構えていた悠生だが、趙雲の意外な本音を知り、なんだかおかしくて笑ってしまった。


「このような情けない様を、知られたくはなかったな」

「ふふ…子龍どの、なんだか可愛い…あ、そう言えば左慈どのが、もう"五年"に拘らなくて良いって言っていたんです。子龍どのに伝えると良いって」

「な、何だって…?」

「初めはよく理解出来なかったんですけど、もしかしたら、僕のことを心配してくれたのかもしれないですね」


趙雲があからさまに動揺してみせるのが、可愛くて思えて仕方がない。
長坂の英雄と呼ばれた男が、こんな子供相手に赤面しているのだから。
左慈と趙雲がどんな話をしたかは全く分からないが、趙雲の反応を見ていたら、聡明な仙人に恋の相談でもしてくれていたのでは…と無性にドキドキしてしまう。

五年なんか、あっと言う間だろう。
それよりも早く、趙雲を安心させてあげられるぐらいの大人になれたら…良いのだけれど。
いつか必ず、一人で生きなければならない日が来る…、だから今を大切にし、皆と生きる未来を守ろう。
戦に明け暮れて、本当の平和を手に入れる頃には、きっと、もっと大きな幸せを手に入れているはず。

大好きだと言う代わりに、悠生は思い切り趙雲に抱き付いた。
趙雲が結婚をして、子供を授かったら…、めいいっぱい、祝福するつもりだ。
大好きな人の幸せを近くで感じていたい。
…ずっと、傍に居たいから。


「早く大人になれるように、頑張ります。子龍どの…そうしたら今度は…僕のこと…」

「悠生殿……」

「今日は、もう少し一緒に居ても良いですか?子龍どのに抱きしめてもらって凄く幸せだったから、離れるのが、寂しいです…」


大人になる、と言った途端に子供のように振る舞って、全力で甘えてみたりして。
少しぐらいは困らせたって良いでしょう?
趙雲はそんな悠生を愛おしげに見つめ、強く強く抱き締めた。



END

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