天へと向く心



「お目覚めかな、悠生殿」

「あっ、あの…!僕…勝手にっ…」

「いや、折角訪ねてきてくれた貴方を待たせた私が悪いのだ。だが…そのような愛らしい寝姿を見せられるとは、夢にも思わなかった」


人様の部屋で爆睡してしまったことに申し訳なさを感じていた悠生は、寝台に腰を下ろしていた趙雲が少し照れたように笑っているのを不思議に思うも、寝起きの頭ではいくら考えても理由が思い当たらない。
しかし、目線を下げた悠生は、趙雲の羽織を未だに手にしていたことに気が付き、心臓が止まりそうになる。


「こ、これは…っ!」


綺麗に畳まれていたはずなのに、しわくちゃにしてしまった。
ぎゅっと抱き締めて眠らなければ、ここまで皺は付かないだろう。
寝ぼけながらも、趙雲のぬくもりを求めようとしていたことは歴然である。
言い訳も弁解も思い付かず、悠生は耳まで真っ赤にして俯くほかなかった。


「何も恥ずかしがることは無いだろう。私は嬉しくてたまらないと言うのに」

「…女々しい自分が…嫌です…」

「女々しくなど…、私は、どんな悠生殿も魅力的に思う。…だが、欲を言えば、そのような羽織ではなく、私を求めてほしい…」


この人は、なんてことを言うのだ。
砂糖よりも甘い台詞を耳元で囁かれては、顔も体も熱くなって、おかしくなってしまいそう。
熱を冷ます方法も知らない悠生は、鼓動が趙雲にまで聞こえてしまいそうなほどに速まり、あらゆる意味で戸惑わずにはいられない。

そっと、手のひらが重ねられ、趙雲はごく自然な流れで、口付けをしようと迫ってくる。
慣れない甘い空気と愛の言葉に翻弄され続けた悠生は、力無く趙雲の手を握り返すも…、此処を訪ねた目的を思いだし、もう片方の手で彼の鼻を押し返し、キスを阻止する。


「…ま、まって…くださいっ!僕、子龍どのに大事な話があって…その…雲緑どののことなんですけど…」

「雲緑殿…?」

「はい…子龍どのは、どうして結婚しないのかなって…雲緑どの、綺麗で素敵な人だって言うのに、悩む理由なんて…」


 

[ 21/65 ]

[] []
[]
[栞を挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -