天へと向く心



「悠生殿、戦場でも、劉禅様の御傍に居てくださいますか?貴方の励ましがあってこそ、劉禅様も辛い現実を乗り越え、大きく成長なされることでしょう」

「…良い機会なのかも、しれないですね。分かりました。僕も一緒に戦場に行きます」


もし、城に残れと言われたら、悠生は無理矢理にでも着いていっただろう。
戦場は怖いところだが、そんな場所に、阿斗を一人にすることの方が耐えられない。

悠生の返答を聞き、諸葛亮は安心したように微笑んでいたが、その眼光は未だ鋭い。
まだ何かあるのかと、悠生はどきりとしたが、諸葛亮の打ち明けた彼の"悩み事"に、頭を悩ませる羽目となってしまった。


「実はもう一つ、悠生殿にお願いがあるのです。これは、貴方にしか頼めない、重大な話なのですが…」

「な、なんですか…?」

「趙雲殿のことです。あの方は戦場での活躍が嘘のように、女性に関して潔さがありません」


趙雲の名を出し、さらには彼の女性問題について、諸葛亮は溜め息混じりに語り出す。
何故わざわざ、そんな話を聞かせるのかと、趙雲を慕う悠生は、あまり良い気がしなかった。
仮にも、悠生は趙雲の恋人である。
諸葛亮は知らないのだから仕方がないかもしれない…、だが趙雲は以前、「私の想いは周知の事実」ととんでもない発言をした。
そもそも、蜀のブレーンである諸葛亮が、悠生と趙雲の仲を知らないはずもない。
全てを見通した上で、諸葛亮は悠生に相談をしたのだ。


「馬雲緑殿のことはご存知でしょう?趙雲殿には彼女との婚約をお勧めしたのですが、返事をはぐらかされているのです。何も今すぐ誓いを立てるようにと言っている訳ではないのですが…これ以上は待つことも出来ません。悠生殿には、趙雲殿にはっきりした返答を寄越すよう、進言していただきたいのです」

「……、そうですね…僕も、趙雲どのには早く、結婚してほしいですし…」


返事を先延ばしにすることで、雲緑にも迷惑がかかるし、その兄である馬超と趙雲の友情がこじれることになったら悲しい。
趙雲が知らない女人と結ばれるぐらいなら、悠生も親しい馬超の妹・雲緑と結婚してもらう方が気が楽だし、趙雲の婚姻は、阿斗だって望んでいたことなのだ。
ならば、悠生にも反対する理由は無いだろう。

ちくりと胸が痛んだが、悠生は諸葛亮の願いを聞き入れることにした。


 

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