失われた輝き



「小春も、良き殿方に巡り会えました。心から陸遜様のことを愛していたようです。娘はこんなにも早く、祝言をあげたいと私に打ち明けて…」

「陸遜様は誠実なお方ですから、きっと小春様を幸せにしてくれると思います。お二人が、幸せにならないはずがありません」


とても、優しい人たち。
今が乱世であれ、幸せを得ることは出来る。
大きくはなくとも、あたたかな幸福を。
咲良がこうして、満たされているように。
だから、今度は誰かの幸せのために、力になりたいと思っている。
それは小春のためであり、そしてこの世界に生きている悠生のためでもあるのだ。


「…なあ、落涙、ちっと良いか?」

「甘寧さん?」


扉を開け、どかどかと足を踏み入れてきた甘寧は、その態度とは裏腹に、困ったような…難しそうな表情をしていた。
一緒に仕事をしていたはずの孫策の姿は無く、咲良は疑問を持ちながらも、彼の次の言葉を待った。


「今、陸遜が目を覚ましたぜ」

「陸遜様が!?」

「ああ。だが俺には手に負えそうにねえから、あんたが話を聞いてやってくれねえか?千春は見ててやるからよ」


せっかく陸遜が意識を取り戻したと言うのに…、浮かない顔をする甘寧は、陸遜と話もせずに戻ってきたらしい。
手に負えない、の意味が分からなかったが、陸遜の元へ行けば分かることだろう。
咲良は甘寧に千春の世話を任せ、大喬に挨拶をして部屋を後にした。

小春を愛し、慈しんでいた孫策と陸遜。
同じ想いを抱いていた二人だからこそ、衝突してしまう…、咲良が想像した以上に、彼らは深く苦悩していた。



END

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