尊い絆を繋ぐ



「ねえ、千春ちゃん。今日は俺と一緒に寝てくれないかな?千春ちゃんに暫く会えなくなるから、寂しいんだよ」

「凌統おにいちゃん、さみしい?千春、パパともっとあそびたかったけど…、おにいちゃんといっしょにいてあげるね!」

「千春、凌統だけじゃつまらねえだろ。俺も一緒に寝てやるよ」


いったい何を考えているのか(周泰に対しての当て付けであろうか)、甘寧がすかさず横入りし、凌統は心底嫌そうに溜め息を漏らした。
「何が悲しくてあんたと寝なくちゃならないんだ」と愚痴をこぼした凌統だが、甘寧に恋する千春の笑顔は、一際輝いていた。




 

千春を凌統に預けた咲良は、久方振りに周泰の邸に足を踏み入れた。
ひと月も留守にしていた夫人の帰還に、侍女や使用人達は喜んで迎え入れてくれた。
邸の主である周泰が酷く落ち込んでいる様を見た皆は、理由は分からずとも心配していたことだろう。
自分が戻ったことで、少なからず周泰に元気を与えることが出来たかと思っていたが、咲良の想像以上に、周泰は機嫌が良かったようだ。


「わ、良い香り…味は……、う…けほっ!ちょっと辛いかもしれないです…」

「……、」


周泰の私室に招かれた咲良は、孫権が差し入れてくれたという酒を味わっていた。
しかし、現代の酒に比べるとアルコール濃度が高いようで、普段から酒を飲み慣れていない咲良は、舌先でちびちびと舐めとることしか出来ない。
一方、平然と酒を飲んでいた周泰は、そんな咲良の姿を見てふっと柔らかく微笑んだ。


「幼平様は、流石ですね…私なんて、少し口にしただけで目眩がしてしまいそうで…」

「…無理をなさることはありません…貴女は変わらずに、お可愛らしい…」

「っ……」


可愛い、だなんて。
自分を可愛いと思うことは無く、直接的な褒め言葉は気恥ずかしく感じるが、周泰の言葉だから…嬉しくて溜まらなかった。
優しげな目をする周泰に、咲良はどきりとして、酒のせいでほてっていた頬が、さらに熱くなる。
それ以上、酒を口にすることなど出来そうになかった。


「…未だ…夢を見ているかのようです…咲良が此処に居る…俺の手の届く所に…」

「夢じゃ…ありませんよ。私は此処に居ます。幼平様の、お傍に…」


視線を通わせることすら、今の咲良は羞恥を感じてしまう。
咲良は俯きがちに答えたが、次の瞬間には周泰に強く抱き締められていた。
逞しい腕に抱かれ、どきどきと脈打つ鼓動が伝わってしまいそうなほどに緊張していたが、咲良は素直に彼に身を任せる。


 

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