姫様の夢 その5



「待てよ、じゃあ桜が母親に似ているって…、政宗様がそう言ったのか…?」

「そうだ。独眼竜は私が、いずれ我が子に手をかける鬼女になると決め付け、厭悪したと言うことだ」

「っ、何で!!桜が何でその人と一緒にされなきゃならないんだ!」

「さあな。だがこれで理解しただろう?私と独眼竜は友になどならぬ。お前が尽力したとしても、不可能だ」


政宗様との不仲の理由。
オレ、こんなにも深刻な話だと思っていなかったから、余裕に構えていたんだ。
たけど、どうしろって言うんだよ。
仲直りなんて、友達になるなんて、途方も無く遠い…夢のまた夢。

…お母さん、か。
オレもさくらも母さんが好きだった。
母さんも、オレ達を可愛がってくれた。
大好きだよって…抱き締めてくれた。

政宗様はどうなの?
病気になる前に、大好きなお母さんに遊んでもらったことや、頭を撫でてもらったことがあるかもしれない。
愛された記憶があるから、もっと苦しい。
愛情は憎悪に変わってしまったんだ。

考えただけで体が震える。
母さんに殺意を込めた視線を向けられる、そんなの、オレなら耐えられない!


(だからって、政宗様…、なんで桜に八つ当たりするかな…)


氷のようだと。
桜が傷付かないとでも思ったか?
政宗様は桜に母親の影を見たのだろうか?
桜とお母さんを重ねて、それで苦手意識を抱いてしまったのなら、今更そのイメージを覆すのは難しすぎる。


「こら、お前が泣くな。目覚めて涙を流していたら、幸村様が誤解をする」

「なっ、泣いてない!…でも、ちょっと落ち込んだかな。だってさ…こんなのって…」

「……、」


ただ、悲しくなった。
政宗様のお母さんは、政宗様が病気になって、愛することをやめてしまった。
他人の心を完全に分かってあげることは出来ないけど、お腹を痛めて産んだ子供に殺意を抱くなんて、正気の沙汰じゃないよ。

政宗様は母親が狂っていく姿を、どんな想いで見つめていたんだろう。
過去のトラウマが解消されなければ、政宗様が桜を理解する日は訪れない。


 

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