姫様の夢 その5
桜はオレの顔を見るなり、マジ有り得ないんですけど、とでも言いたげに、冷ややかな目で睨んできた。
言いたいことは分かる。
ごめん、いろいろと…
「私は幸村様と床を共にしているのか」
「うん…でもオレは悪くないはず!だからって、幸村様が悪いってわけでもないけど…」
「あの独眼竜が原因だ、決まっている」
独眼竜、それって政宗様のことだよな?
カッコいいあだ名がついているよな。
確かに、政宗様が幸村様に酒を勧めなければ、桜が押し倒されることもなかった。
幸村様も被害者みたいなものだし、彼を責めたって仕方がない。
「一生の恥だ。なんということを…」
「そんなに落ち込むなって…、幸村様は女の子に手を出すような人じゃないだろ?」
「……有り得ん!」
…想像したのか?
桜はぶんぶんと首を振り、これは、完璧に嫌がってるな。
内心、幸村様に同情してしまった。
やっぱり立場上、責任は問われてしまうんだろうか。
姫ともあろう人間が、軽々しく男と同じ部屋で寝るなんて…許されないこと、なのかな?
「はあ…。お前の言う通り、相手が幸村様ならまず咎められることはないだろう。あの方は男として見られていない」
「はは…幸村様が可哀想だ」
「…しかし、私を呼び出すとは。独眼竜は何を考えているのだ」
そうだ、桜に聞かなくちゃ。
政宗様のこと、どう思っていたのかって。
嫌いだ、の一言で終わらせないでくれよ?
「桜と政宗様ってさ、どうして仲が悪かったの?」
「あの男…独眼竜は昔から女を嫌っている。特に、私は母親に似て…氷のようだからと」
政宗様が女嫌いだって!?それは意外だ。
あれだけ美形なんだし、絶対に可愛い彼女がいて、青春真っ盛りで、恋愛もたくさんしているものだと思っていた。
偏見だろうか、これは。
「母親…要するに、政宗様のお母さんは冷たい人だったってこと?」
「詳しいことは知らぬが、独眼竜と呼ばれるようになった経緯に、目の病があったそうだ。幼少期に病を発症し、奴は母親である義姫様に殺されかけたと、そう聞いた」
な…なんだ、それ。
政宗様が、目の病気?
それで、自分のお母さんに命を狙われた?
信じられない、信じろって言う方が無理だろ。
どうしてそんなことを…親子なのに!!
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