賑やかな宴



綺麗に磨かれた長い廊下、畳の良い香りがする和室、手入れが施された広い庭。
ここだけ見たら、立派なお屋敷ですね、と素直に感想を言えたと思う。


(…そういう髪型が流行しているのか?)


あまりじろじろと見つめたら失礼だが、どうしても目に入ってしまう。
勿論全員がって訳じゃないんだけど、多くの人が髪型をリーゼントにしていたんだ。
それがまた立派なものでさ、ワックスで固めなければそうはならないだろって感じに。
彼らはすれ違う度に挨拶をしてくれるから、悪い人達ではないんだろうけど…、政宗様の部下は暴走族系なのだろうか。


「小十郎!小十郎はいるか!」

「此処に居ります、政宗様」

「真田と姫を案内する。dinnarの準備は出来ているだろうな?」

「無論」


小十郎、と呼ばれた男の人は顔に大きな傷があり、髪型はオールバックで、まるでヤクザのような風貌だった。
第一印象が、政宗様よりも、怖い。


「princess、コイツは片倉小十郎。俺の最も信頼する男だ」

「小十郎、さん…?」

「……、」


…視線だけで殺されそうだ、本気で逃げ出したくなる。
小十郎さんは単に桜を見ているだけなんだろうけど、それだけでも相当威圧感がある。


「政宗様…噂は誠だったのですか」

「That's right!だがな、以前の姫よりは扱いやすいと思うぜ」


噂…、桜が記憶を失ったってあれか。
小十郎さんが驚いているのは、オレが中に入る前の桜姫を知っているからだ。

オレの演じる桜は、全然姫らしく見えないんだろうな…これでも努力はしているんだけど。
もっと勉強をしよう。
帰ったら雪ちゃんたちに女の子らしさを教えてもらおう!


その夜、小十郎さんが作ったと言う夕食(作ったのは野菜か、料理か。どちらも想像しにくい)をご馳走になったオレと幸村様。

これが本当に美味くって!
煮物を口にした瞬間、涙しそうになった。
心を込めてくれたんだろう。
料理がいくら上手な人でも、食べた相手を感動させる味を出すってのは、なかなかに難しいことだと思うから。


(小十郎さんは好きなんだろうな…料理か、家庭菜園が)


幸村様と政宗様は会話が弾んでいるようで、箸が止まっている。
お酒も入っているせいか盛り上がっていて、凄く楽しそうだった。

積もる話もあるはずだ。
暮らしている場所がこれだけ離れていて…、しかも、お二人とも暇じゃないから、いくら仲が良くたって会いたいときに会えない、そんな関係。
まったく、不便な時代だよ。
でも、だからこそ、彼らは再会を心から喜び、この短いひとときを楽しもうとしていたんだ。


 

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