明るい音楽



「つまらなくなんかないですよ。言葉が伝わらなくても…、トランペットで想いを伝えることは出来ます!」

「trumpet……?南蛮語を覚えたのか?」


南蛮語が何処の国の言葉かは分からないけど、そんなことはどうでも良い。
オレは風呂敷をほどき、きらりと星の光よりも輝くチャーリー君を手に持った。
有り余る怒りを込めてやりたいけど、それじゃあ良い音は生み出せない。
イメージは重要だ、音楽には強く関わってくる。


(ここはひとつ、ノリノリな、踊り出したくなるような選曲を…)


高らかに、チャーリー君が奏でる力強い音色を、遠くに届ける。
政宗様ならラッパの音を聴いたことがあるかもしれないけど、現代のトランペットは日々進化しているんだ!

桜を置いてさっさと帰ってしまったあの人も、耳を傾けてくれることを期待してみたりして。


「…Oh…これは…」


何気なく眺めていて覚えたものだけど、音楽の教科書に載っていた外国の歌だ。
とびきり明るくて楽しい音楽。
英語が苦手でも、単語の意味が分からなくても、不思議なことに、歌にすると受け入れやすくなるものだ。
オレの場合は…そんな明るくて賑やかな歌をチャーリー君で奏でたら、楽しさは倍増するんだ!


「桜殿!素晴らしいでござる!」

「幸村様、ありがとうございます!」


幸村様からは嬉しい言葉を頂けた。
彼の言うことには少しも裏が無いから、素直に喜べる。
さて…、肝心の政宗様は、どんな感想をくださるのか。


「あの、どうでしたか?政宗様」

「what!?アンタが俺を名で呼ぶとは…驚きだ」


嘘だろ、名前で呼んだこともなかったの?
そんなんじゃ関係もよそよそしいし、永遠に他人のままじゃないか。
オレが思った以上に、桜と政宗様の仲は悪いようだ。

桜は…どうしたい?
本当に、心から政宗様のことが嫌いか?

少しでも交流があるならば、仲良くしてさ、楽しく過ごした方が良いに決まってる。
地球の人口を65億と考えたら、今此処で政宗様と向き合っているのは65億分の1の確率。
これって紛れも無い奇跡だろ?
だったら大事にしなくっちゃ。


「甲高くてcoolじゃねぇが…俺は好きだぜ、その音色。tension上げるにはもってこいだ」

「本当ですか!?テンションあがりますか!」


なんて素敵な褒め言葉!
撤回するよ、政宗様は意外に良い人だ。
見た目は怖くても話が分かるお方だ!


「遅くなったが、真田、そしてprincess…桜姫、歓迎するぜ」


招かれざる客にならなくて良かった。
今日から二日間、政宗様の元で過ごす。
二日も…佐助さんに会えないのか。

ああ、母さん、チャーリー君……
また眠れぬ夜を過ごすことになりそうだ。



END

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