明るい音楽
「政宗殿、桜殿を怯えさせないでくだされ」
「取って食ったりしねぇよ!にしても…変わっちまったな、まるで別人だ」
幸村様の助け船で政宗様の視線から逃れることが出来た。
オレ、この視線を浴び続けたら死ぬ、緊張で死んでしまう。
助けて母さん!と内心叫びながら、オレは走って勢いよく佐助さんにしがみついた。
顔見せしたんだから、もう帰っても良いでしょ!!
「ちょ、桜ちゃん」
「佐助さん、カー君呼んでください!」
「かあくん?」
ここにいたら絶対危ないって!
オレは小心者だから、桜みたいに強気な態度はとれない。
「は、破廉恥でござるぞ桜殿!!」
知るか、今はそんなことどうでもいいわ!
一刻も早く帰らせてほしい、そればかり考えていた。
「桜ちゃん、悪いんだけど俺様任務があるから帰るね。旦那が居れば身の危険は無いと思うから」
「一人で帰っちゃうんですか!?やだ…」
「そんなに嫌がらないの!永遠の別れじゃないんだから。明後日、迎えにくるね」
……行ってしまった。
佐助さんはカー君に掴まり、高く空へと消えていった。
案外お母さんは娘に厳しかった。
これぐらいで泣き言言うな!ってことなのか…?
「桜殿…」
「……、」
佐助さんが消えていった方向を見上げるオレの心中を察してくれたのか、幸村様は心配そうに声をかけてくださった。
佐助さんがあまりにも呆気なく、素っ気なく…オレから離れて行ってしまったから、ショックと言うか…
「おいおい、忍びがいねぇと何も出来ねえのか?随分とつまらねぇ女に成り下がったもんだな」
「政宗殿!何を…!」
なっ…なんつった、今!
オレのことは何を言ったってかまわない。
でも、桜を侮辱するな!
誰にも言えないことだから、オレが判断して行動したものは、結果はどうあれ、全て桜の責任となってしまうんだ。
何が貴方の気に障るのかも分からない。
だからって、いちいち相手の反応をうかがって受け答えをするのも、イライラする。
本気で桜を嫌っているのだとしても、お願いだから…政宗様、それ以上桜の悪口は言わないで。
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