姫様の夢 その4
「桜…ごめん」
「それ以上言うな。お前は甘いのだ。その甘い思考が弱さを生む。生半可な優しさなら捨ててしまえ」
「はっ、はい!」
「でなければお前も、私の二の舞になる。佐助を諦められぬと言うのならば、心を強く持て」
ちょ、ちょっと待ってくれ。
アドバイス…だよな?
桜はオレの心配をしてくれてるんだろうけど、内容が意味深で…難解だ。
オレが桜の二の舞に?
佐助さんを諦めないと(その言い方ではオレが佐助さんに惚れているみたいじゃないか)、桜のようになっちゃうって?
「"姫じゃなければ良かった"」
「え?」
「私は…愚かだ。たった一人の男の言葉に殺されてしまった」
浮かべられた笑みは、花のように綺麗で、今にも消え入りそうで…儚かった。
桜の意識が夢の中にあるのは…佐助さんのせいなの?
オレもそうなる可能性があるって言うのか?
…ねえ、聞いたら駄目?
聞いたら桜は悲しむだろうか。
心が、殺されるって…、実際にそんなことが起こり得るんだ。
何をされたら?どんなことを言われたら?
何が、桜をここまで追い詰めたって言うんだよ。
「私はな、お前に全てを委ねてやったのだぞ?お前なら、私以上の桜姫になれる。そう、期待をさせてくれ」
「……、」
今は、そっとしておいた方が、いいのかな。
それはきっと触れられたくない傷だから。
傷口はまだ塞がっていない。
完治するにはまだまだ時間がかかるだろう、チャーリー君の音で癒してあげることが出来たらいいんだけど。
(オレが佐助さんの傍にいるだけで、それだけで、桜を苦しめてしまう?そうだとしたら…オレは…)
オレは、桜が大事だよ。
桜の一番近くにいるのはオレだ。
桜のことを気にかけるのは、妹と、…さくらと同じ名前だからって理由だけじゃない、本当だ。
だけど、桜と同じくらい、佐助さんのことも…信じていたいんだ。
たとえ佐助さんがオレを疑っていて、桜に酷いことをした本人だとしても。
お願いだから、信じさせてくれよ!
だって、オレにとっての佐助さんは、多分……こちらの世界での母親、なんだ。
END
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