姫様の夢 その4



「桜…ごめん」

「それ以上言うな。お前は甘いのだ。その甘い思考が弱さを生む。生半可な優しさなら捨ててしまえ」

「はっ、はい!」

「でなければお前も、私の二の舞になる。佐助を諦められぬと言うのならば、心を強く持て」


ちょ、ちょっと待ってくれ。
アドバイス…だよな?
桜はオレの心配をしてくれてるんだろうけど、内容が意味深で…難解だ。

オレが桜の二の舞に?
佐助さんを諦めないと(その言い方ではオレが佐助さんに惚れているみたいじゃないか)、桜のようになっちゃうって?


「"姫じゃなければ良かった"」

「え?」

「私は…愚かだ。たった一人の男の言葉に殺されてしまった」


浮かべられた笑みは、花のように綺麗で、今にも消え入りそうで…儚かった。
桜の意識が夢の中にあるのは…佐助さんのせいなの?
オレもそうなる可能性があるって言うのか?

…ねえ、聞いたら駄目?
聞いたら桜は悲しむだろうか。
心が、殺されるって…、実際にそんなことが起こり得るんだ。
何をされたら?どんなことを言われたら?
何が、桜をここまで追い詰めたって言うんだよ。


「私はな、お前に全てを委ねてやったのだぞ?お前なら、私以上の桜姫になれる。そう、期待をさせてくれ」

「……、」


今は、そっとしておいた方が、いいのかな。
それはきっと触れられたくない傷だから。
傷口はまだ塞がっていない。
完治するにはまだまだ時間がかかるだろう、チャーリー君の音で癒してあげることが出来たらいいんだけど。


(オレが佐助さんの傍にいるだけで、それだけで、桜を苦しめてしまう?そうだとしたら…オレは…)


オレは、桜が大事だよ。
桜の一番近くにいるのはオレだ。
桜のことを気にかけるのは、妹と、…さくらと同じ名前だからって理由だけじゃない、本当だ。

だけど、桜と同じくらい、佐助さんのことも…信じていたいんだ。
たとえ佐助さんがオレを疑っていて、桜に酷いことをした本人だとしても。

お願いだから、信じさせてくれよ!
だって、オレにとっての佐助さんは、多分……こちらの世界での母親、なんだ。



END

[ 60/198 ]

[] []
[]
[栞を挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -