愛される姫様
「ひいさま…ありがたき幸せにございます!ああ、雪がひいさまのお友達に…」
「雪、ずるい!」
「そうよっ、抜け駆けをするなんて!」
高いトーンの声と共に、突如部屋になだれ込んできたのは…顔立ちが雪ちゃんによく似た、可愛い女の子が二人。
オレは驚く間も無く言葉を失った。
きゃっきゃっと女の子が戯れる姿は、見ていて嫌な感じはしないけど…
「あなた達、ひいさまの御前でなんてことを…!無礼ですよ!」
「だって…雪ばっかり」
「ひいさまが雪とお友達になられたのなら、私達も…」
見れば見るほどそっくりだ。
雪ちゃんの方が彼女達よりも大人っぽい雰囲気に思えるけど、それでも見分けるのはなかなかに難しい。
「ひいさま、ご無礼をお許しください。この者達は…私めの妹にございます」
「雪ちゃんの妹…」
妹がだったのか、それなら似ていて当前だ。
三つ子かと思ったけど違うんだ、雪ちゃんに比べるとやっぱり顔立ちや口調が幼い。
(桜、大人気じゃないか)
この子達も、雪ちゃんと同じように、桜を慕ってくれていたんだ。
ありがとう、遅くなったけど感謝するよ。
桜を好きになってくれてありがとう!
「二人の名前を教えてくれる?」
「はい!私は空と申します」
「私は、月です!」
空ちゃんと、月ちゃん。
可愛らしい二人にぴったりな、しかも短くて覚えやすい名前だ。
赤い花に負けないぐらい可憐な女の子達が、桜の側に咲いてくれたみたい。
ちょっとだけ、ちょっとだけなんだけど、雪ちゃんが羨ましくなっちゃった。
可愛い妹が二人もいるなんて、いいな。
兄弟や、姉妹。
大人になってもこうして側にいて、かけがえのない深い絆を築けること。
オレには、それが何よりも、最も幸せなことに思えるんだ。
END
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