姫様の夢 その3



「あやつは忍びだ。主を守るためなら手段は選ばない…非道な忍びだ。目で見たものだけが真実だとは限らん。そして佐助は…私を疑っている」

「どういうこと?オレが、桜の中にいるって、気付かれてるの?」

「そうではない。お前が関わる前…それ以前に、私は…」


何か嫌なことを思い出したのだろうか。
桜は眉間にしわを寄せて黙り込み、その後の言葉はいつまで待っても紡がれなかった。

佐助さんが桜を疑っているだって?
気を許すなと、信じてはいけないと…、そう桜が言うのは、オレのためを思ってのことだろうか。
心配をしてくれるのはありがたいよ、感謝する…、だけどオレは、桜の言っていることがいまいち信じられなかった。

佐助さんは桜の身を案じて(それも仕事だから?)母親のように優しい雰囲気で、傍にいてくれた。
桜姫の、傍に……


(佐助さんも…オレみたいに演技をして、嘘をついているってのか?)


飄々としているけど、たまに真面目で。
チャーリー君みたいな髪の毛で。
作り笑顔ばかりかと思えば、いきなり優しく笑ってみせたりして。

真実がオレに分かるはずがない。
何をされたら(どんな酷い台詞を言われたら)桜が佐助さんを、こんなにも警戒するようになってしまったのか…、想像もできない。

桜が現実に戻りたくないと、死んでしまいたいなどと言う原因は…もしかして、佐助さんにある?

何も知らないっていうのは…つらいな。
桜の思い出を、オレも共有することができたら、僅かでも世界は変わるだろうか。


「無駄話はやめだ。時間が惜しいな…。お前、それを私に教えろ。その…」

「ん、何?」

「チャーリーとやらを…私も…」

「……、」


…完全に気を抜いていたけど、桜相手にときめいてしまった。
だだだだってさ、照れてるんだもん、あの桜が!!?
普段とのギャップに驚かされる。
チャーリー君?チャーリー君のおかげなの!?


「もちろん!じゃあ早速練習しようぜ!」


いや、一応オレは男だから。
気になる女の子(恋愛的な意味では無い)がこんな反応をしたら、ドキドキしちゃいますよ。
佐助さんに対して気掛かりなことが出来なかったら、今日は嬉しい事が沢山あった日、で終われたんだけどな。



END

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