姫様の夢 その3



「幸村様は純粋すぎる御仁だ、私には重すぎる存在だった…。言い訳だが、幼き日の私は、独占欲が強かったのだろう」

「独占欲?」

「一人前に独占欲はあったが、それを表現する術を知らなくてな。結果、幸村様との距離を作ってしまったようだ」


む、難しいです桜さん!
そもそも話し方が年寄りくさいんだよ、堅苦しいのはいらないんだから、普通に喋ってほしい。

独占欲って、誰を独占したかったの?
幸村様が…信玄様と仲がいいから?
想像してみる。
子供の頃の幸村様が若い信玄様に肩車される姿。
めちゃめちゃ楽しそうだ。

小さい子って、何でも自分のものにしたがる。
独り占めしたいお年頃なのに、大好きなお父さんを取られたらそりゃ嫉妬もするだろう。
桜もそうだったのかもしれない。
性格上、正直な気持ちを伝えられないからさらに、心の中に寂しさが渦巻いて。

取り残された桜。
どんな想いで幸村様を見ていたんだろう。
羨ましかった?素直な彼に憧れた?


「…不思議なものだ。他人に心の内を語ったことなど、無かったというのに」

「良いんじゃない?ここは桜の夢の中だし、オレは誰にも告げ口しないぜ」

「お前という奴は…」


呆れられても、嫌な気はしない。
昨日よりもずっと、桜が心を開いてくれているように感じるから。


「私は…何も望まない。望むことは許されない。そのような想いを抱いた故に、私は取り残されたのだ。全ては私の責任なのだ」

「屋敷の人がよそよそしいのは、桜が恥ずかしがり屋だったからだろ?」

「馬鹿者!何を申すか」

「いいからいいから。大丈夫だよ、桜なら」


きっかけは作った。
あとはオレと桜の努力次第だ。
一緒に頑張ろうよ。
桜は乗り気じゃないかもしれないけど。

桜がひなたの世界に戻る勇気を手に入れるまで、オレは桜姫として生きるから。
素直に微笑むことが出来る日が来る時を願って、傍にいるよ。


「…はあ、そうだな。ひとつ、忠告してやろうか」

「どうしたの、改まっちゃって」

「幸村様は構わぬ。だが、佐助には気を許すな。絶対にだ」


え、なんで、佐助さん?
思わず首を傾げてしまうが、真剣な目をする桜が、冗談を言っているとは思えなかった。

佐助さん、良い人じゃん。
いろいろお世話してくれるし、簪くれたらしいし(桜に話そうと思ってたのに忘れていた)。
姫様である桜に、堂々とタメ口で喋ったりさ、凄い度胸だよね。
その方が気を使われていない分、楽で良いんだけどな。


 

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