姫様の夢 その3



三度目の夢を見る。
オレの手には冷たい感触が…、今日は、最初からチャーリー君が手元にあった。

桜は丁寧に正座をして、瞳を閉じていた。
良かった、今日の彼女は泣いていない。


「桜」

「……、」


桜はオレの顔を見るなり、嫌な物を見た、とでも言うように、ふいっと視線を逸らした。
こういう反応は慣れたつもりだけど、やっぱり地味に傷付くものだ。


「…まあいいや。それより聞いてよ!今日さ、城下に行って…」

「知っている。幸村様と甘味屋へ行ったのだろう?ずっと、見ていた」


ずっと?ずっとって…どうやって!?
慌てふためくオレに、どこまでも冷静な桜は、小さく溜め息を漏らしながら告げた。


「お前の目を通して私も同じ風景を見ている。視覚だけではない、全ての感覚がある」

「こ…心を読めたりは?」

「この程度、いちいち気にしていては身が持たぬぞ」


うわあ、マジですか。
別に、やましいことを考えている…訳ではないけどさ!恥ずかしいものは恥ずかしい。
ああ、五感が機能しているってことは、前に転んで鼻血を出した時、桜も痛みを感じていたのか。
ごめん、あれはオレも恥ずかしかった。
穴があったら速攻潜り込んでいただろう。


(そっかあ…桜も見ていたんだな)


オレの目から見たこの世界、桜の目にも、綺麗に映っているのかな。
桜はどんな気持ちで、幸村様や、佐助さん…屋敷の人達の姿を眺めていたんだろう。
記憶喪失扱いをされ、他人に体を占拠された桜姫は、オレの勝手な行動に怒りを覚えている?


「お前は男を喜ばせる方法を身に付けているようだな」

「うーん、褒めてるの?っていうか皮肉?」

「どちらもだ。あの幸村様を手懐けるとは、称賛に値する」


手懐けるって!なんて物言いをするんだ。
桜…顔には出さないけどなんか不機嫌じゃないか?
こう…憎いとか殺してやりたいとか、そんなんじゃなくて。


「あー、桜は…何で幸村様と仲良くしなかったんだ?結構、長い間一緒にいたんだろ?」

「そうだな。私が物心ついて数ヶ月後には幸村様のお声を聞いていた。昔から変わらぬ…あの耳に痛い大声は」


うん、否定はしない。
物心…、普通は四歳ぐらいには自我が目覚めているものだと思う。
二人はそんなに小さな頃から傍にいたんだ。
なら尚更、幼なじみとして友達になっていてもおかしくないけど…


 

[ 42/198 ]

[] []
[]
[栞を挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -