城下を歩く



「おお、某も毎日佐助に髪を結ってもらうのだ。一緒でござるな!」

「そ、そうですね」


まあ、幸村様は不器用そうだからな。
そのふわふわな茶髪を綺麗にひとつに纏めるのは佐助さんのお役目なのか。
忍者なのに、お母さんみたいなこともやってるんだな。

佐助さん…どうして黙っていたのかな。
教えてくれれば良かったのに。
だってこの簪、桜にプレゼントしてくれたんでしょ?

いや…、桜はそれをあんなぞんざいに扱っていた訳で…
…言えなかったんだ。
せっかく買ってあげたのに、大切にしてもらえなかったらそれはショックだろう。


(これからは大切にするね…。簪の飾り方もちゃんとマスターするから!)


明日から、毎日この簪をつけよう。
気に入っているんだって姿を見せれば、佐助さんも安心してくれるはずだ。


「桜殿によくお似合いだとは思っていたが、まさか佐助の見立てであったとは…」

「幸村様?」

「…某も、桜殿に贈り物をしたいでござる…」


え、何でいきなり?
記念日でもないし、気を使わなくても…
プレゼントを貰って悪い気はしないけど、もしかして、張り合っているのか?
桜に簪を買ってくれた佐助さんに?


「でしたら…また、今日のように城下へ連れてきてくれません?私、凄く楽しめましたから!」


見返りが欲しくてデートをしたんじゃなくて、コミュニケーションを取りたかっただけなんだ。
幸村様と友達になれた今日は十分満足したよ、だから特別何かが欲しいとは思わない。

どうしてもって言うなら、これからの日々、幸村様と過ごす時間が贈り物ってことでいいじゃないか。
形には残らないけど、思い出は残るだろ?
それで、納得してくれないかな?


「桜殿が喜んでくださるならば、某は何度でも城下へお供するでござる!」


単純だ…、いやいや、幸村様が素直な人で良かったよ。
オレと幸村様は、もし現代で出会っていたら、友達になれただろうか。
こうして二人で街に出て、評判の喫茶店なんか行っちゃったりして…って続きは妄想しないでおこう。

でも、それはそれで…楽しいんだろうな。
幸村様のおかげで、こっちに来てから初めて肩の力を抜くことが出来た気がするよ。
本当に、貴方には感謝してばかりだ。

めいいっぱいのありがとうの気持ちを、桜と一緒に、幸村様に返していこう。



END

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