城下を歩く



「団子を貰おう!」


道場に「たのもう!」って突撃する勢いで幸村様は甘味屋さんの暖簾をくぐった。
他のお客さんが驚いていないところを見ると、これがいつもの光景で、幸村様は常連でお得意様なんだ、と分かる。

開いている席に座ってすぐ、運ばれてきたお茶と団子。
餡と胡麻と…、すごく美味そうだ。
オレがチャーリー君を見るときのようにフィルターがかかって、団子がキラキラと輝いて見える。


「幸村様、それ全部食べるんですか?」

「や、やはり食べ過ぎだと思われますか?驚かないでくだされ」


オレの分はいたって普通の量なんだけど、幸村様の前に運ばれた団子は、唖然としてしまうぐらいだった。
団子が山済みになって(こうも綺麗に重ねた店員さんがまず凄いな)何本重なっているのか分からなぞ。


「あー…でも、甘いものは別腹って言いますしね!私も、その半分ぐらいなら余裕ですよ!」

「うむ…、しかし、やはり桜殿は、甘味を目の前にして現を抜かすような男は、嫌いでござるか?」


目をうるうるさせて…何を言い出すんだ。
お菓子が好きってだけで嫌いになるとか、オレはそこまで心が狭くはない。
好きなものを好きだって、堂々と言えないのは悲しい。
それを周りの人に否定されたら、尚更だ。
男が甘党なのって、この時代じゃ変なのかもしれないけどさ、別に構わないだろ。


「と、とりあえず、お団子をいただきませんか?お茶も冷めちゃいますし…」

「…承知致した」

「い、いただきまーす!」


なんだか微妙な空気になってしまった。
楽しいお出かけのはずだったのに、何が悪かったんだ?
団子の量に一瞬驚いて、目を向けただけだぞ…って、これが原因だな。

だからって、別に幸村様を嫌うとか…偏見を持つとか、そんなことは全然ないんだから。
でも結局は、幸村様を落ち込ませてしまった訳で…、申し訳ないことをした。


「……、美味しい!」


程よく柔らかくて、甘さもちょうどいい。
思わず声をあげてしまうほど、今まで食べたどの団子よりも、美味しかった。
幸村様がご贔屓にしているのも分かるな。


「あれ…幸村様?」


幸村様はまだ団子に手をつけていなかった。
しかも、じいっとオレの顔を見て…、何か言いたげなご様子だ。


「桜殿」

「な、なんでしょうか?」


幸村様がいきなり真面目な表情をするから、心拍数が急激にあがっていく。
なな、何を言われるんだろう!?
もしかしたら、説教されるのか!?
団子を食す作法が最悪でござる!とか!?


 

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