朗らかな朝に



「そう。姫様が望むなら、俺様が守ってあげる」


佐助さんの指が桜の髪を撫でる。
優しく、慰めてくれているかのようだ。

佐助さんが言う"守る"には説得力がある。
オレが言うのとでは大違いだ。
きっと佐助さんなら、言葉通り桜を守ってくれるのだろう。
桜も絶対、オレなんかより頼れる佐助さんを選ぶし、あ……なんだ、居場所がないのはオレの方じゃないか。

この世界にとって、オレは異物だ。
オレを知っている人は誰もいない。
桜に説教できる立場じゃなかったな。


「佐助さん、…よろしくお願いします」

「改まってどうしたの?当たり前でしょ。貴女は武田の姫様なんだから」


当たり前、か。
しごく当然のように守ると口に出来る、それは守るために必要な強い力を持っているからだ。

守ってくださるなら守られてみようか。
オレは佐助さんを信じる。
だから、貴方もオレを、桜を…


「桜ちゃん」

「へ?今なんて…」

「…だって、元気が無いみたいだからさ」


……変なの。
姫様と呼ばれるときは何も思わなかった、むしろ距離を感じていた。
敬われること事態が堅苦しい、いちいち気を使ったり畏まったり、ぶっちゃけ面倒じゃないか。

桜ちゃん、って…ただ呼び方を変えただけなのに、なんでだろう、すごく嬉しいんだ。


 

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