朗らかな朝に
「そう。姫様が望むなら、俺様が守ってあげる」
佐助さんの指が桜の髪を撫でる。
優しく、慰めてくれているかのようだ。
佐助さんが言う"守る"には説得力がある。
オレが言うのとでは大違いだ。
きっと佐助さんなら、言葉通り桜を守ってくれるのだろう。
桜も絶対、オレなんかより頼れる佐助さんを選ぶし、あ……なんだ、居場所がないのはオレの方じゃないか。
この世界にとって、オレは異物だ。
オレを知っている人は誰もいない。
桜に説教できる立場じゃなかったな。
「佐助さん、…よろしくお願いします」
「改まってどうしたの?当たり前でしょ。貴女は武田の姫様なんだから」
当たり前、か。
しごく当然のように守ると口に出来る、それは守るために必要な強い力を持っているからだ。
守ってくださるなら守られてみようか。
オレは佐助さんを信じる。
だから、貴方もオレを、桜を…
「桜ちゃん」
「へ?今なんて…」
「…だって、元気が無いみたいだからさ」
……変なの。
姫様と呼ばれるときは何も思わなかった、むしろ距離を感じていた。
敬われること事態が堅苦しい、いちいち気を使ったり畏まったり、ぶっちゃけ面倒じゃないか。
桜ちゃん、って…ただ呼び方を変えただけなのに、なんでだろう、すごく嬉しいんだ。
[ 19/198 ]
[←] [→]
[戻]
[栞を挟む]