それぞれの恋
「待て!佐助が来るならば、此処で待てば良いだろう!」
「この様を佐助に見られ、それでいて無視された場合の事を考えたくないのでな。そなたも私の自尊心を傷付けたくないと思うならば他言するな」
…かすがが桜姫を傷付けた犯人であると知れたら、佐助も黙ってはいないだろう。
最悪、打ち首になってもおかしくはない罪だ。
立ち去る桜姫に声をかける。
彼女が言う台詞を良いように解釈すれば…
「桜っ!お前は佐助のことを…?」
「…叶わない恋をする者同士。いずれ、傷を舐め合おうではないか」
主を慕う、忍びのかすが。
忍びを…佐助を想っていた桜姫。
叶わない恋をした二人は、どこか、似ていた。
桜はかすがと仲良くしようと、彼女なりに接していたのだ。
見ようとしなかったのは、かすがの方で…
「いやー、かすがから誘いを受けるとは思わなかった。で…桜姫様は?」
「…佐助、桜を泣かせたら貴様を殺す」
「いきなりを何言い出すの!?」
…桜に謝りに行かなくては。
友に、なれるかは分からないけれど。
その時は、佐助の幼少時代の馬鹿な話を存分にしてやろう、とかすがは心に決めた。
END
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