朗らかな朝に



あの後、二度寝をすることは出来ず、オレは布団の中で丸まって唸っていたんだけど、気が付いたら朝になっていた。

胸がドキドキする。
だって、外からすごい声が聞こえてくるんだ、何事?
天井がギシギシと音を立てて、埃が落ちてきた。
地震と間違いそうなぐらいに揺れている。
この声は…信玄様と幸村様?


「おぉ館様ぁああぁ!」

「ゆぅきむるぅらあぁああっ!」


戸を開けて廊下に出て、外を眺めれば、二人が殴りあいをしているのが見えた。
朝から元気が宜しいな。
まさか、ケンカ…?いや、あんな良い笑顔でケンカはしないだろう。

ふっ飛ばされた幸村様なんて、何メートルも向こうに落下している。
それでも幸村様は平然と起き上がっているし、瞳を輝かせていて、むしろ幸せそうだ。


「…はぁ」


夢見が悪いと、必然的に次の日は憂鬱になるんだ。
疲れは取れたんだけど、ずっしりと気分が重い。
ついでに目が痛い。
散々涙を流したせいか、姿見の前に座り顔を見たら、瞳は充血して真っ赤になっている。


(ったく…、可愛い顔が台無しだぞ?)


おはよう、桜。
やっぱりこっちが現実なんだな。

にこっと笑ってみるけど、オレの中にいる桜は今も無表情なんだろう。


「あら、姫様、もう起きてたの?って、寝ていられないよね。こんなに騒がれたら」

「さっ、佐助さん。おはようございます」


いきなり襖が開いたからびっくりした。
ノックぐらいしてくださいと言いたいが小心者のオレには言えなかった。


「ま、これは日課みたいなものだから。慣れればどうってことないよ」

「そ、そうですか…」


慣れろと、そうおっしゃるのですね。
目覚まし代わりと思えば毎日早起きが出来るな…うん、そう思い込むことにしよう。




 

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