死の円舞曲



なあ、桜。
オレの願いは、とっくに叶っているよ。
大好きな妹と音楽を、トランペットを。
桜がオレの願いを叶えてくれたんだ。
だけどオレは…、お前の願いを何ひとつ叶えてあげられなかった。
帰ってきてほしい、と望まれても、頷くことさえ躊躇われる(自信が、無いから)。
オレは桜から掛け替えのないものをいっぱい貰ったのに、何も返すことが出来ないのか。


「あ、桜…、ちょっと、簪が…」

「ん…?」


しゃらんと、簪の揺れる音が聞こえない。
桜の髪に目をやると、肌身離さず身に付けていた佐助さんに貰った簪の飾りが、欠けていることに気がついた。
壊れちゃったのか、さっきの爆発で…

思わず、それに触れようと手を伸ばした途端…、チャーリー君が直視出来ないほど明るく輝き出した。


(っ、桜!?待てよ!まだオレはっ…!)


チャーリー君の光に包まれたのは、オレ。
これは、この時代に来た時と同じ輝きだ。
ああ…元の時代に帰る時が来たのか。
桜の生活を勝手に引っ掻き回して、なのに何も解決しないまま、平和な世界に戻るんだ。


『桜ちゃん!!』


え、うそ、佐助さん!?
ずっと遠くから、まるでエフェクトをかけたかのように、佐助さんの声がエコーして聞こえる。
助けに、来てくれたんだ…。
良かった、佐助さんが居るなら、これ以上桜が傷付けられることは絶対に無い。

ただ、もう少しだけ、傍に居たかった。
もっと、一緒に…


(ああもう!!オレの馬鹿!何考えてんだ…最悪だ…)


チャーリー君、佐助さんの声を聞いただけで胸が高鳴るのは、何でだと思う?
桜の気持ちだからって言い訳はもう通用しないよ、オレは一人になってしまったから。


(さよならも、言えなかったんだな)


オレはこのまま帰っていいのか?
やり残したこと、本当に無い?
……、やっぱり却下!
桜、オレだけを安全な場所へ逃がそうとするのはやめろ。


(あのな、オレはまだ、お前の兄としての役目を果たしていないんだよ!)


今度は、視界がオレンジ色に染まる。
オレは手にしたチャーリー君を落とさないように、見失わないように、ギュッと力を込めた。

次に目を開けた時、オレはどうなっている?



END

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