死の円舞曲
次の瞬間、鼓膜が一瞬で引き裂かれそうなほどの破裂音が響き渡った。
反射的に目を閉じようとしたけど間に合わず、一瞬にして視界が真っ赤に染まり、すぐに暗闇を見る。
付近に、爆弾がしかけられていたんだ。
ひとつひとつの量は少ないけど、あらゆる場所に設置されていたようで、近くの建造物から炎の燃え盛る音が聞こえた。
「っ…いって…」
巻き込まれ、爆風に飛ばされたオレは、石畳に体を打ちつけた。
同時に、激しい痛みが全身に走る。
手のひらに爪を立て、歯を食いしばって耐えるが、気を紛らわすことさえ出来なかった。
オレを縛っていた縄は燃えたようだが、帯と結んでいたチャーリー君は、繋がったままオレの胸に飛び込んでいた。
運良く、チャーリー君が地面に激突することは避けられたようだった。
「女神が炎に包まれ、身悶え朽ち行く…、卿も、美しいとは思わないか」
松永が笑っていた。
綺麗だと思ったその声も、今は耳を塞ぎたいほどの雑音に聞こえた。
「あ…あれ、何だ…目が…見えない?」
真っ暗、なんだ。
自分の身に何が起きたかが理解出来ず、オレはパニックに陥った。
確かに目は開けているはずなのに、視界は黒一色で、先程まで目にしていたものが何も見えなくなっていた。
頭を打った訳ではないんだよ?
骨は折れたかもしれないけど、目を悪くする刺激は受けなかったはずだ。
「ふざけんなよ…どうして見えないんだ!!」
目に感じた違和感が原因か。
よくよく思い出してみれば、爆破音がしたとき、顔中に細かい砂塵が降りかかった気がする。
その粒が、目に入ったせいだろうか?
「女神よ、私に従いたまえ。硝子のように大事に触れてやろう。戦乱の世で盲目となった卿は赤子同然。そして籠の鳥…卿は私のものだ」
「もう…やめてくれよ…!!何も聞きたくない。いやだよ…」
一時的なものかそうじゃないのか分からないけど、当たり前のように持っていた視力を突然無くしたオレは憔悴しきっていた。
被害を被ったのはオレだけじゃない。
桜を、失明させてしまったんだ。
オレのせいだ。
何の根拠も無く、桜を危険な目に合わせ、妹と…、さくらと同じように、闇の世界へ閉じこめてしまった。
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