姫様の夢 その9



「私は神と言えども、小さな存在であったが…人のために生きたいと願っていた。それが今は…、神でもなく人でもない、まるで化け物だ」

「っ……、」

「私を恐れるか?そうだろう、私も私が怖いのだ」


そんな訳無いだろ、と強く言い返したら、桜は寂しげに笑った。

人間に生まれ変わった桜は、他人を救うことも難しかったはずなのに、命を削ってまで、霊の魂を慰めていたんだ。
頻繁に家出をする姫様だと、皆に誤解をされて、ずっと辛かったはずなのに。
無理に力を使い体に鞭打って、いくら苦しんでも、楽になれない。

ああ、だから初めて会った日、桜は自ら殺されようとしていたんだな。
自分で死ねないなら、誰かに殺してもらおうと…、限界まで追い詰められていた。

死にたくてたまらなかったんだ。
それを、オレが邪魔した。
最初さ、桜はオレを怒ったよな。
泣きながら、お前が私を殺せばいいだろって怒鳴られたんだっけ。


「他人の手にかかればこの中途半端な肉体は壊れ、魂も神の国へ帰り、来世では本当に、人間として生まれ変われると…願うことはそればかりだった。だが、気が変わったのだ。私は…生きたい」

「桜……」

「いつの間にか、愚かな欲が生まれてしまった。お前が…、私を認めてくれたからだ」


な、なんで?オレが?
あれか、桜を神様だと認めたから?
だって桜がそう言っているんだから疑う必要もないし、政宗様の所で見せてくれた霊能力…それが神様の力だと言われたら納得出来るし。
信仰とはまた違うけど、桜を慕っているところは、ある意味同じなのかもしれない。


 

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