姫様の夢 その9



「この世には神が溢れておろう?神は、人に存在を認められなければ神ではいられなくなる。信仰…というのか。神と認識されなくなった"できそこない"は、私のように地上へと追いやられるのだ」

「へ、なに、つまり…桜は…神様なのか…!?」


桜は無言で頷いてみせた。
思った以上に、スケールの大きな話だった。
信じられないような事実を突きつけられ、オレは次の言葉が思い付かなかった。
私は人の子じゃないって…、そういうことだったんだ。

…できそこない、だってさ。
神様って完璧なイメージがあったけど、信仰心が薄れてしまえば、その価値が無くなってしまう。
意外にも、生存競争は激しいらしい。
でも、だからって、追い出すなんて酷い。

実際に、桜は天から追放された。
地上に落とされた桜は、もし信玄様が手を差し伸べてくださらなかったら…どうなっていた?
赤ちゃんだぞ、いくら神様の力が秘められていたとしてもだ、一人では何も出来ない弱い子供を森に放置するなんて、神様の世界の常識っておかしくないか!?


「投げ出された私の魂は、地上へ降りた際に造り出された赤子の肉体へと溶け込み…私は人の身体を得た。分かるか?この器は生み出されたものではなく意図して造り出されたものなのだ。ゆえに、お前とも魂を共有出来たのだろう」


耳に聞こえる内容は悲しいことばかり。
桜のその体は、母さんの体の中で守られながら育ったものじゃない。
血が通っているのに?
心臓だってちゃんと動いているんだよ、桜は此処に生きているんだから。
こんなにもあたたかくて柔らかいのに…作られたものなんだ。


「桜は神様だった頃の記憶があって…、悲しくて…死んでしまいたいと思ったんだな…」

「ああ…、私の居場所は何処にも無い。神でありながら体は人のものである私は、中途半端な存在のまま生きていても仕方ないと…。だが、神は自害ができぬらしい。何度も試したのだが、な」


そういうこと、簡単に言うなよ。
いや…、桜は真剣に死を望んでいたんだ。
神様は自分で命を止めることが出来ないのだと、気付いてしまったときの桜の絶望を…オレには想像も出来ない。


 

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