姫様の夢 その9



桜は笑っていたけど、嘘を付いている顔じゃないんだ。
エイプリルフールにはまだ早い。
打ち明けられた事実は相当ショックなもので、人の子じゃない、とかってのはよく分からないけど。

容易に解釈できた、信玄様との繋がり。
実の親子、じゃない?
信玄様の娘だから、桜は甲斐の姫として育てられてきたんだろ?


「信玄様は、森に捨てられていた赤子の私を拾ってくださった。私を養子ではなく、実の娘として迎え入れてくださったのだ。だが、信玄様の口から話されたことは一度も無い」

「なら、桜は何でそのことを知ってるの…?」

「私が、人ではないからだ。お情け程度だが、力がある。死した人間の魂を導くだけではなく、都合よく利用することも出来る…この力が…」


寂しそうに微笑む桜を見たら、オレまで悲しくなってきた。
辛い記憶を思う桜より、オレの方が泣きそうになっている。
今、桜はどんな気持ちで喋っているのかを考えたら、胸が痛くなった。

今までも、桜が信玄様を父と呼ばないことに違和感があった。
本当の親子じゃないから、血縁関係が無いから、桜はコンプレックスを感じていたのかな。
それでも…さ、信玄様は桜のことを愛していると思うよ。
拾われた子だと言う事実を本人にも周りにも隠していたのは、桜を悲しませないためだ。

血の繋がりが無かったとしても、そんなこと関係無い。
生みの親より、育ての親の方が…、愛情を持って接してくれた信玄様は、間違いなく桜のお父さんだよ。


「話を続けよう。お前の国には神と呼ばれる者は存在するか?」

「神様?居るだろうけど…それほど身近な存在とは言えないかな。いろんな国の宗教が混ざっちゃって、何が何だか分からないし」


クリスマスとかな。
キリストの誕生日は二の次だ、日本人ってお祭り大好きだから。
日本独自の行事と、アメリカやヨーロッパの行事とが入り混じって、それが当たり前になっている。


 

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