重なり合う声



「私にお話したいことがあるんだって?」

「ですが、ひいさま…」

「良いんじゃない?この子も今日から此処で暮らすんだから。家族に遠慮はいらないでしょう?」


侍女に課せられた規則は知らないけど、オレもこの子のことは心配していたからさ。
子供でも謁見の予約を取らなければ、姫様と会話することも許されないんだ。
それが当たり前のことと認識した上で、身分の壁を取り払うことが出来るのは、此方だけだ。


「家族…?屋敷の者は皆、ひいさまの家族になれるのですか?私達侍女も…?」

「勿論だよ!大切な、家族…それ以前に、友達だって。私が勝手に思っているだけなんだけどね」


上に立つものと、従うもの。
簡単に言い切ってしまえば、ただそれだけの関係になってしまう。
嫌じゃん、そんな淡泊な関係だなんて。
甲斐の人は、武田家の一員だって、信玄様もそう思ってくれているはずだ。
オレだって、場違いにもほどがある奴だったのに、こうして適応し、馴染むことが出来たんだ。


「…仕事に、戻らせていただきます。何かありましたら言いつけてください」

「うん、ありがとう」


嘘は、言っていない。
…皆のこと、本当に家族だと思ってる。
雪ちゃんは嬉しそうだったよ。
オレが、友達になってって言ったときより、今日の雪ちゃんは…、オレの気持ちを分かってくれたよ。


「お待たせしました。初めまして、桜です」

「あ、あの…ぼく…」

「緊張しないで?お話してくれるんでしょ?」


ああ、こんなにガチガチになっちゃって。
ちっちゃな男の子に、緊張するなって言う方が無理な話かもしれない。
相手は身分の高い姫様だもんな。
少し無礼を働いただけで罰が下されると、厳しく教えられていたりするのかな。

城下町では、桜姫についてどんな噂が飛び交っていたのかと、考えると落ち込んでくるんだけど、この子の様子を見ると、桜のことを勘違いしまくっていたんだと思う。


「う、ぅ…ぼく、姫様にっ…」

「なな、泣かないでっ!ど、どうしよ…」


怖いのか!?そんなに桜が怖いか!!
普通に会話しているつもりだったんだけど、それだけで泣き出してしまうなんて。
本格的に泣き出されたなら、きっと手がつけられない。
プチパニックに陥りそうになっていたオレは、ずっと手にしていたチャーリー君の煌めきを見て、閃いた。
そう、オレにはチャーリー君という素晴らしい相棒が居るじゃないか!


 

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