重なり合う声



さっき、皆が現場を調査していたんだ。
破片や炭しか残っていないけど、それだけでも得られる情報は沢山あるんだって。
爆弾の造られた産地や、その爆弾を仕入れる国、軍、小さな組織でさえも。

忍びの才蔵さん辺りは、もう犯人の見当がついているのかもしれない。
素人のオレには踏み込めない世界だ、今度こそ邪魔にならないように引っ込んでおこう。


(絶対に放すな、と言われたからには徹底するよ。この方が桜も安心だろ?)

(……、)


チャーリー君の、管が曲がって出来たちょうどいい隙間に細帯を通して、結ぶ。
反対側をオレの腰にも巻いて、その上から普通に帯を締めれば完成だ。
手を放しても腰にぶら下がるように長さを調節すれば、床に擦って傷を付ける心配も無い。
見栄えは悪いけど、これでオレとチャーリー君は二度と離れられない運命に!


(では、屋敷を見て回るか)

(オレもそうしようと思ってた。皆の様子も気になるしね)


自然に、口に出来た姫様らしい言葉。
桜は甲斐の民の平穏を祈っている。
一緒に居るから、分かるんだ。
本当は、居ても立ってもいられないんだろうけど、今の桜は自分の意思で行動出来ないからな…でも、人々の幸せを願う気持ちはオレも同じだ。

ゆっくりと廊下を進むと、普段と違った光景が目に入る。
使用人の皆は、各々の仕事に勤しみ、その中で、壊れた襖や破れた障子の修復作業を行っていた。
女中さん達は、怪我をした人の介抱だ。
でも、こうして一生懸命に働く人を見ていると、いつもと何ら変わらない気がしてくるんだよな。
数日前までの平和な日常は、どこへ行ってしまったんだろうか。


「ごめんね、ひいさまに会わせてあげたいけれど…規則なの」


…雪ちゃんの声だ。
声が聞こえた方に足を進めると、小さな男の子に視線を合わせて身を屈めている雪ちゃんを見つけた。
あれ、あの子は…


「ひいさま!」

「雪ちゃん、その男の子って、最後に運ばれた赤ちゃんのお兄ちゃんじゃない?」

「はい、そうですが…」


やっぱりそうだ、燃える家屋の前で、一人で泣いていたあの男の子だ。
母親と妹が火傷を負い、家を失った。
辛い思いをさせてしまったな。
でも、子供を路頭に迷わせたりはしない。
家屋が倒壊し、家を無くした人達には、新しく住む場所が見つかるまで、屋敷の空き部屋を提供した。


 

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