正義の味方



「武蔵…くん?」

「なんだ?」

「絶対、また甲斐に来てね!今度はちゃんとお礼をしたいから…、城下にも美味しいお団子屋さんとかあるし!」

「ほんとか!?やくそくな!」


桜を相手に、気さくに話してくれる、笑ってくれるのが嬉しい。
イメージしていた宮本武蔵とは大分違ったけど、この際気にしない。
こんな大変な状況じゃなかったら、ゆっくり話をして、ゆくゆくは友達になれたかもしれないのにな。


(そう簡単に約束を交わして良いのか?)

(駄目?後のことは桜にお願いしよっかなって…)

(私に、無理難題を押し付けるか…)


がっくりとうなだれる桜が目に浮かぶようだ。
でも、そう言うなって!
武蔵くんは、甲斐の危機を救ってくれたヒーローなんだから。

今は、感謝の言葉しか出てこないよ。
本当に、ありがとう。


「桜、おれさまにほれんなよ?」

「ご心配なく。ちゃーんと好きな人はいますから!」


残念だったな武蔵くん、桜は佐助さんが好きなんだぜ。
そもそも桜は、武蔵くんみたいな活発な子はタイプじゃないだろう。
オレは大好きだけどな、友達としてなら。


(でもさ…俺様とか言われると、佐助さんを思い出しちゃうんだよな…)


武蔵くんを責める訳じゃないけど、切なくなっちゃうよな。
戦場に居る佐助さんに、今回の事件についての伝令は、いつ頃届くのだろうか。

消えかけた煙の隙間から、嘘のように清々しい青空が見えた。
どうして、こういう時に傍に居てくれないんだよ。
オレは佐助さんに会いに行くことが出来ない。
早く帰ってきて、と願うしかないんだ。



END

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