正義の味方
「武蔵…くん?」
「なんだ?」
「絶対、また甲斐に来てね!今度はちゃんとお礼をしたいから…、城下にも美味しいお団子屋さんとかあるし!」
「ほんとか!?やくそくな!」
桜を相手に、気さくに話してくれる、笑ってくれるのが嬉しい。
イメージしていた宮本武蔵とは大分違ったけど、この際気にしない。
こんな大変な状況じゃなかったら、ゆっくり話をして、ゆくゆくは友達になれたかもしれないのにな。
(そう簡単に約束を交わして良いのか?)
(駄目?後のことは桜にお願いしよっかなって…)
(私に、無理難題を押し付けるか…)
がっくりとうなだれる桜が目に浮かぶようだ。
でも、そう言うなって!
武蔵くんは、甲斐の危機を救ってくれたヒーローなんだから。
今は、感謝の言葉しか出てこないよ。
本当に、ありがとう。
「桜、おれさまにほれんなよ?」
「ご心配なく。ちゃーんと好きな人はいますから!」
残念だったな武蔵くん、桜は佐助さんが好きなんだぜ。
そもそも桜は、武蔵くんみたいな活発な子はタイプじゃないだろう。
オレは大好きだけどな、友達としてなら。
(でもさ…俺様とか言われると、佐助さんを思い出しちゃうんだよな…)
武蔵くんを責める訳じゃないけど、切なくなっちゃうよな。
戦場に居る佐助さんに、今回の事件についての伝令は、いつ頃届くのだろうか。
消えかけた煙の隙間から、嘘のように清々しい青空が見えた。
どうして、こういう時に傍に居てくれないんだよ。
オレは佐助さんに会いに行くことが出来ない。
早く帰ってきて、と願うしかないんだ。
END
[ 149/198 ]
[←] [→]
[戻]
[栞を挟む]