正義の味方



「本当に…ありがとうございます。感謝してもしきれません。貴方のお陰で、大切な命が助かりました」

「あ?べつに、おれさまさいきょうだし。で、腹減って死にそうだけど銭もねぇんだって!」

「いや…あの、お礼をしたいのは山々なのですが…」


偶然城下を通りかかったところ、火事に遭遇し、才蔵さんとの言い合いでオレが姫だと気付いて声をかけてきたらしい、旅のお方。
少なからず、オレはその少年の態度に困惑していた。
桜姫を相手にし、ここまで気持ち良くタメ語を使う人に出会ったのは初めてだ。
人とは違うところが、ある意味天性の才を持っているようにも思える。

あの状況で迷わず火に飛び込み、赤ちゃんを救い出したその潔い判断、勇敢な行為。
英雄と呼ぶに相応しい振る舞いだと感動したが、報酬目当てだったと聞き、カッコよさが半減したのは内緒だ。


「見ての通り、城下は復興させる必要があります。物資が要りますし、今私の判断のみで貴方に褒美を与えることは…」

「えー!?おれさまがっかり…」

「桜様、これを」


見かねた才蔵さんに手渡されたのは、…金額はまだ計算出来ないんだけど、戦国時代のお金だ。
まさか、才蔵さんのポケットマネー?
うわ、ごめんなさい!
後で桜の小遣いから返金するから!自由に使える貯金があるのかも分からないけど!


「足りなければ、日を改めて甲斐を訪ねなさい」

「ちぇ。食い物がよかったのに。でも、ありがたくちょうだいするぜ」

「ま、待って…!私、桜っていいます。貴方のお名前は?」

「おれさまを知らない!?おまえ、姫なのにばかなんだな!」


おっお前に言われたくねぇよ!
姫って分かってるならちょっとは敬え!
悔しいから、オレもタメ口で喋ってやる。

何なんだろうな、この大らかで遠慮のないガキ大将のような性格は。
顔は…まぁ、オレよりも良い、と思うよ!
ただ見た目がさ、こう言っちゃ悪いけど…野生児っぽくて。


「おれさまはむさし!みやもとむさしだ!」

「え、うそ…ええええっ!!?」

「どうだ!おどろいたか!」


えへんと誇らしげに胸を張る、コイツが。
宮本武蔵?巌流島でコジローとやり合ったムサシ?
同姓同名の別人じゃないの?


 

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