正義の味方



火災現場を間近で見たことはないけど、テレビのニュースで放送するものを見ただけでも、悲惨さはよく伝わってくる。

夜中に、消防車のサイレンが聞こえて眠れなくなることがあった。
あれは妙に恐怖心を煽る音だと思う。
さくらも一緒になって怯えていたんだよな。
軽くトラウマだ。



「…ひどい…」


数日前に、幸村様と歩いた城下町。
楽しそうに、幸せそうに生きる民を見た。
町の変わり果てた光景に、悲しくなる。

爆発が起きたのは中心部で、風にあおられ火が次々と燃え移り、家屋が数軒炎に包まれていた。
押さない駆けない走らない、なんて有名な教訓も実際こうなると意味がなく、町民は悲鳴を上げ逃げまどい、パニックになっている。
このままじゃ町全体が火事になってしまう!!

桜姫が自ら危険な場所へ現れたことに、驚く人が大半だ。
それが当然の反応だと思うから、顔には出さない。

オレは近くで負傷者の手当てをしていた人に、被害の様子を尋ねた。


「すみません、状況は?」

「桜姫様!重傷者が複数、火傷など軽傷者が多数居るようです」

「…怪我人を城へ運んでいただけますか?動ける人は、火を消しますので協力してください!」


息をするだけで肺が燃えそうになる。
この辺りの気温は、オレが思う以上に上昇しているのだろう。
喉が枯れるほどに大声を出せば、皆が一斉にオレを見た。

小娘に命令されるのは不服かもしれないけど、従ってくれることを願い、大人を誘導する。
消防車が呼べないなら、自分達の手で消化活動をするしかない。
幸い、近くに井戸がある。
バケツリレーならぬ桶リレーだ!
火消しをするには、これが一番効率がいいはずだ。


「誰か助けてぇ!娘が…!」


ごうごうと燃え盛る家屋の中から飛び出してきた女の人。
顔は煤で汚れ、体中に火傷を負い、ついに力尽きて倒れてしまった。


「大丈夫ですか!?しっかりしてくださいっ!」

「娘が…まだ赤子なのです。どうか…お助けを…」

「助けますから!必ず、助けてみせますから、だから…、」


…でも、どうやって助ければいい?
火が消えるのを待っていたら、娘さんは焼け死んでしまうよ。

これだけ離れた場所に立っていても、熱風と煙で苦しいって言うのに。
この地獄のような炎の中へ飛び込めば、助けに出た勇敢な人も、ただでは済まない。


 

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