姫様の夢 その8.5
「私は…お前を他人とは思えぬのだ。私はお前を、これ以上不幸にはさせぬ。…妹が兄の幸せを願うのも、当然だろう?」
「え、それって、」
桜はクスッと微笑むと、オレより一回りは小さな手のひらで、間抜けな顔をするオレの手を包んだ。
妹が…って言ったんだよな。
チャーリー君と耳の良さだけが自慢のオレが、聞き間違うはずがない。
オレのこと、兄として認めてくれたんだ!
「お前がそこまで溺愛するさくらと、一度顔を合わせてみたいものだな」
「すっごい可愛いよ、さくらは!」
なんだか…、脱力してしまった。
一気に肩の荷が下りたって感じがする。
オレ、気にしすぎていた?
さくらのことで後悔ばかりして、自分で自分の首を絞めていた。
カッコ悪いお兄ちゃんでごめんな、さくら。
オレ、お前のためにも、桜を幸せにしてみせるから。
勿論オレ自身も、不幸になんてならない。
いつだって前向きに、生きてみせるよ。
「ありがとう…桜」
「それは、何に対しての礼だ?」
「いっぱい!とにかくありがとう!」
オレはここにいるよ。
こうして、笑っていられるよ。
さくら、お前も笑っているか?
桜がオレを許してくれた、だからオレも、オレ自身を許そうと思う。
「…あのさ、桜」
「何だ」
うん。
以前に比べたら、壁も無くなったし、仲良くなったんだしさ、そろそろ名前で呼んでくれないかなぁ…と。
いつまでもお前、じゃ切ないんです。
ま、急ぐことはないか。
桜を急かして嫌われたら嫌だしな。
明日も、明後日も、機会はあるんだから。
「そうそう!かすがさんってさ、オレの友達にそっくりなんだぜ?」
「ほう?」
桜に話したいこと、桜から聞きたいこと…まだまだ沢山あるんだ。
今は時間を忘れて、桜とのお喋りを楽しむことにした。
いつ現代に帰れるか全く分からない。
なんとなく、いつまでも桜とチャーリー君と、このままでいられるような気がしていたんだ。
END
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