姫様の夢 その8.5



オレは恵まれている。
強くて優しい親友が居て、同じぐらい辛いはずなのに息子を想う両親が居て…チャーリー君に、出会うことが出来て。


「お前は今も、さくらに会いたいか?」

「はは、どうかなー。今更さ…顔を合わせにくいじゃん」

「帰りたくはないのか?故郷にはお前の家族が居るのだろう?姫の身代わりになることは、お前が望んだことではなかった。私が押し付けたために…」

「そりゃ…いつかは帰るんだろうよ。でも今はまだ、ここにいたいんだ」


ホームシック状態に陥りそうな時もある。
帰りたくてたまらないとき、寂しさに泣きそうになる夜もあったよ、男のくせに。

でも、目を閉じたら桜に会えた。
仲良くなることばかり考えていたら、寂しさなんて知らぬ間に吹き飛んでいったよ。
だから、オレは桜に感謝している。
さくらの笑顔に癒されていたように、桜の存在に、救われたんだ。


「桜が姫様として幸せに生活出来るようになるまでは、帰れないな」

「何故お前は…そこまで…」

「桜がオレの妹だったらいいな、なんて思ったり…、ごめんな。代わりのつもりはなかったんだけど…」


罪滅ぼし、をしたかったのかもしれない。
桜と過ごすうちに、さくらとの共通点を発見しては喜び、落ち込んでいた。
オレはいつだって、妹の影を求めていた。

でも、違うんだ。
桜とさくらは、同じじゃない。
重ねて見たりもしたけど、今は…もう一人妹が出来たって、勝手にそんな気になっているんだ。
桜には迷惑な話だけどな。

可愛い妹の幸せを。
兄貴なら、願わずにはいられないだろ?


「私個人の意見だが、さくらは最初からお前を許していると思うぞ?いや…、彼女の想いの強さは果てしないようだ」

「そう、思う?さくらはまだオレのこと、好きかな…?」


桜の言葉が、まるでさくら本人の言葉であるかのように。
オレはしっかりと桜の唇を見つめ、聞き逃さないよう、彼女の声に耳を傾ける。


「何を言うかと思えば…。嫌うはずがなかろう?私も、お前を嫌っていないのだから」

「ほ、本当に!?」


まだオレのこと、好きでいてくれるの?
さくらは、オレを…ずっと傍に居てやれなかった酷いお兄ちゃんを、恨んでいない?

さくらが小学校に入学したら、トランペットを教える約束、してたんだ。
オレはちゃんと覚えているよ。
なあ、今もオレのこと、待ってくれてる?


 

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