姫様の夢 その8



「好きな人に嫌われたくないのは、オレも同じなんだよ。桜に怒られただけで、死ぬかと思ったし」

「何だ。お前は、私が好きなのか?」

「うん、好きだよ。当たり前じゃないか」


間も置かずに気持ちを告げれば、桜は呆気に取られているようだった。
こういうのって、面と向かっては言いにくい言葉だけど…オレは桜が好きだ。
好きだからこそ幸せになってほしい。
桜が佐助さんと結ばれたら…それこそが究極のハッピーエンドだろ?


「もう一つ聞く。お前は…佐助を好いてはいないのか?」

「いや、好きだけどさ。オレ男だし、そもそも生きる時代が違うんだよ」


恋愛的な意味で、オレが佐助さんを好きになることは有り得ない。
桜は心配し過ぎなんだって!
自分で言うが、オレは特殊な存在だ。
たとえこの世界で恋をしたとしても、いつ別れが訪れるかも分からないんだ。
住む世界が異なるのだから、割り切らなければいけないことなんだけど。
大切な友達との別れだけでも辛いのに、誰より特別な人が出来たら…帰れなくなる。

たまにドキドキしてしまうのは、佐助さんに恋する桜の目を通して見ているから、それ以外に理由は考えられないだろ!


「…無知なのだな」

「なっ、オレ無知ってほどバカじゃ…」

「お前は幸村様以上だ。私のことばかりではなく、自分にも目を向けるべきだ」


ゆ、幸村様以上の、無知…!?
何でだろう、激しく凹んできた。
つまり、恋愛音痴ってことでしょうか?


「いいって別に…オレにはチャーリー君がいるし…チャーリー、君…」

「……?」

「オレ、チャーリー君に夢中になって…現実逃避していたんだよな…」


苦しいことを思い出してしまった。
桜にお前のせいだ、って言われたせいか、今までで最も悲しかった出来事、忘れようとしていた記憶が、脳裏に蘇った。
チャーリー君を逃げの道具にしたのは、さくらを失ったばかりの中学生のオレ。
罪悪感だけ綺麗に忘れてしまおうとした、反吐が出そうなほどに、自己中な自分。



END

[ 135/198 ]

[] []
[]
[栞を挟む]



×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -