酒と口づけ



男は女の子と違って限界を察することが出来ないらしい。
オレの場合、チャーリー君の練習をしすぎて酸欠を起こし、倒れたことがある。
勿論、何よりも大切なチャーリー君は守った。
その代わり…、鼻の骨にヒビが入ってしまった。
自分で言うけど、アホだ。


「…は…ぁ…、しんどい…!」


吐き出す息が徐々に荒く、乱れていく。
体の内側は煮えたぎるぐらいに熱いのに、震えるほど寒かった。
壁をつたいながらよろよろと真っ暗な廊下を歩き、部屋に帰ろうとするけど、なかなか辿り着けない。
遠くからは人の騒ぐ声が聞こえ、まだ宴会の真っ最中であることをオレに教えた。

オレ、このまま死にそうです。
ズキズキと頭が割れるような痛みが走る。
風邪のせい、だけじゃないから困った。


夜には、謙信様を歓迎するための盛大な宴会が行われた。
信玄様はいつもより機嫌が良くて、謙信様もお酒に強い方らしく、二人して日本酒を水のように飲んでいたんだ。
見かけによらず…酒豪なんだな。

かすがさんと屋敷に帰ってから、体調が悪化していたオレは、食事に手をつけることもなくぼうっとしていた。
隙を見て抜け出そう。
今日は早めに眠って、明日までには体力を回復させよう。

そんなことを考えていたのに、あろうことか信玄様は桜に酒を勧めてきた。
初めは丁重にお断りしたんだけど…、うん、押し切られて、オレは法律に違反してしまいました。

冷たくて、舌触りは水と変わらないそれ。
アルコール度数は分からない。
でも、酒を生まれて初めて口にしたオレには強すぎて、段々と目の前がぼやけてきて…

そそがれたお酒をほとんど飲み終えた頃、自分が酔い始めていることに気が付いた。
しかも気持ち悪くて…やばい。
このままでは駄目だと思い、どうにか言い訳をして逃げ出してきた。
再び宴会場に戻れる気がしません。


(うう…吐きそう…)


最早、限界だった。
壁に寄りかかって、崩れ落ちるようにして座り込む。
歩けなくなるまで我慢していたから、肉体的な限界はとっくに超えていたようだ。

情けなくて笑えてくる。
自己管理も出来ないで、桜に風邪を引かせた挙げ句、もともとの体調の悪さも合わさって体がおかしくなっているというのに、飲めない酒を口にして。
反省している場合じゃない、気持ち悪い。
少しでも刺激を加えられたら、大変なことになりそうだ。


 

[ 126/198 ]

[] []
[]
[栞を挟む]



×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -