異なる選択



「佐助さんは、私の気持ちに…気付いていると思いますか?」

「知らないと思うぞ。以前の桜は感情を隠すのが得意だった。今は分からないが…意識し出したらすぐに知れてしまうだろうから、気を付けろ」


それって、やばくないか?
気を付けろって忠告されても、既に取り返しがつかない気が…

自分で望んだことだけど、桜の好きな人を知っちゃったし、次からは佐助さんのことを微妙な視線で見てしまいそうだ。
オレは感情を隠すのが苦手だから、バレてしまうのも時間の問題な気がする。


「桜があやつに惚れていたからと、今も同じ男を想うことはない。桜は真っ当な人生を歩むべきだ」

「まっとうな、って、お国のために好きでもない人に嫁ぐってこと…か。姫様として、それが正しいのかもしれないけど…なんだか、悲しいです」


女性は男よりも立場が弱い。
こう言ったら悪いけど、子孫を残すため、自分の意志は尊重されずに…好きでもない人の元へ嫁がされてしまうんだ。
仕方ないよな、ご先祖様達は皆、そうやって生きてきたんだから。

時代に逆らえないのは分かってる。
だから桜は…諦めて、全てを受け入れてしまったのかもしれない。


「それでも…好きな人のことを想い続けても、いいんじゃないかな…」


決して結ばれない想いならば、せめて。
心の中だけで生き続けることまでも、咎めたりしないでよ。


「…桜が…そのように甘いことを口にする女だとは、思わなかった」

「でも、想うだけなら自由でしょう?心の中まで支配されるなんて、我慢出来ませんよ」


周りから見たら、甘いんだろうな、オレ。
それこそしょうがないじゃん、厳しい乱世を生き抜いてきた訳じゃない、甘やかされて育った現代っ子なんだから。

オレにも、好きな人は沢山いる。
正確に数えたことはないけど、絶対、嫌いな人の方が少ないよ。
オレ自身は初恋もまだだから、どんな感情が恋だとか…よく分からないけどさ。

好きな人を好きでいちゃいけないの?
恋愛的な意味での好きって気持ちは、想いが強ければ…簡単に変えられるものじゃ、ないでしょ。


「想うことは、自由…か。忍びであってもか?」

「当たり前じゃないですか!同じ、人の心を持っているんだから…」


桜も、佐助さんが好きならさ、その気持ちを過去になんてしないで。
捨てたりしないで。
忍びを好きになったって、神様は許してくれる、オレはそう思うよ。
頭の悪いオレの意見なんか聞いてられないよな、桜が呆れるのも分かる。

でも、オレだって、オレも…
誰より好きだと思える人が出来たら、永遠に、その人のことを忘れない。


 

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