異なる選択
高校に入学したオレは、吹奏楽部に入部することを心に決めていたんだけど、入部届けを提出するまである程度の期間が設けてあったから、とりあえず部活見学に行ったんだ。
同じ中学出身で、三年間部活も一緒だったはるひさんと。
結局その年のトランペット希望者は、オレとはるひさんだけだった。
また三年間一緒だね、宜しく、と笑う。
『はるひさんはファーストに興味ないの?』
『何言ってんのよ!今更奏君の左側に座るのは違和感があるもん。私はずっと右でいいの』
…そんな質問をしたものの、正直なところ、追い抜かれたくなかったんだよな。
一番のポジションは譲りたくなかった。
はるひさんはきっと、オレが小さいプライドを気にしてることを知っていたから、何も言わず隣にいてくれたんだ。
はるひさんは、良い人だ。
オレ、そんな彼女のそっくりさんに、セクハラされているんですけど!!
「かかかっ、かすがさん!?何してるんですか!」
「抵抗するな。すぐに済ませる」
雪の積もった足場の悪い屋根の上にて、かすがさんは桜の着物に手をかけ、オレは必死に抵抗していた。
なんでこんなことになってるの!
今朝も雪は降り続き、外は肌寒い、じゃなくて凍えそうなほど気温が下がっている。
屋根の上から見る、真っ白に染まった甲斐の国は美しいと思えた。
屋敷から少し離れた高い家屋(一応城の敷地内だ)に連れられ、瓦の上に積もる雪を落としてから、そこに座ったオレとかすがさん。
見れば見るほどはるひさんにそっくりで、オレは一人で懐かしさに浸っていた。
かすがさんもじっとオレを見ていたんだけど、何を思ったか、桜の着物を脱がせようと…
「確認するだけだと言っている!大人しくしろ!」
「え、なっ、なにを…!」
「こら、暴れるな」
いっ、いやだってば!!
かすがさんからしたら、女の子同士だから別に気にするな、って考えているのかもしれないけど…、こんな目立つ場所で脱がすか普通!?
押し返そうとしたけどかすがさんは意外に力が強く、悲しいことにオレはされるがままだった。
脱がされましたよ、冬なのに!
外で上半身肌をさらして、背中をまじまじと見られて…恥ずかしさより、寒さに耐えられない。
「……、」
「…っくしゅん!」
「わ、悪かった…風邪を引かせてしまったな…」
桜のくしゃみを心配したのか、かすがさんは慌てて着物を直した。
やっと終わりですか…、オレ、暫く立ち直れなさそうだ。
それで、かすがさんは何を確認したんだ?
桜の胸の大きさか?そうなのか!?
同性と言えども、他人に桜の裸を見られるなんて。
オレだって桜に気を遣って、風呂のときは目を瞑るようにしているのに!
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