言葉なき歌声



「帰ろう桜ちゃん。本当に風邪引いちゃうから」

「っ……、」

「桜ちゃん?」


佐助さんの言葉と差し出された手を無視して、オレはチャーリー君に被さっていた雪をはらった。
意味が分からないって表情をする佐助さんを見詰めたら、先程よりは、雰囲気が柔らかくなったようにも感じられた。


「佐助さん…私は、佐助さんのそういう目は、あんまり好きじゃなくて…」

「桜ちゃんさ、何で俺様が不機嫌なのか分かっているの?」

「分かってます!悪いのは、自分だって分かっています。申し訳無いことをしました。だけど…」


そうだよ、全部オレが悪いんだよ。
不注意だし、初対面の知らない人にホイホイ着いていく…子供みたいで、何度も佐助さんに心配をかけている。

でも、何もそこまで怒らなくても良いじゃないか。
そもそも、佐助さんが傍に居てくれたら、こんなことにはならなかったのに…なんて、誰かに責任を押し付けてはいけないって、自分だって分かってるんだよ。
それでもオレ自身、悪気は無いつもりだったけど、桜を守る側としては、迷惑だと感じてしまうものなのかな…。


「それじゃあ遠慮無く言わせてもらうけど…、桜ちゃんは無防備すぎる。姫様である以前に、女の子だってことを自覚しなさい!分かった?」

「…はい?」

「何で首を傾げるかな…」


そうか、オレは無防備だったのか。
出来るだけ素が出ないように、常に気を使って生きているつもりだったのに、そう言われてしまうと少しショックだ。

女であることを自覚しろ、ってのは一理あるかもしれない。
未だに成りきれていないもんな。


「今回は仕方なかったとしても、もう体を他人に触れさせちゃ駄目だよ。俺様以外は絶対に駄目!」

「え。佐助さんは?」

「だからね、貴女に触れることを許される男は、俺様だけにしておいてよ」


な、なにを言っ…
そんな台詞を真面目に言われたら恥ずかしいだろ!


「俺様風魔が大嫌いなんだよね。あんな奴に負けるなんて惨めだからさ、そこのところちょっと考えてくれる?」

「はあ…、」


…よく分からなくなってきたぞ。
佐助さんの怒りの原因って結局何なんだ?

思えば朝から佐助さんの機嫌は悪かった。
政宗様にキスされたり、敵であるはずの小太郎さんと知り合いだったり、桜が必要以上に男友達と仲良くしていたから、怒っているのだとしたら。
それってさ、心配って言うよりは…


 

[ 111/198 ]

[] []
[]
[栞を挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -