感謝と感激
結局、政宗様の目的は果たされたのか?
幸村様のこと、それとお母さんのこと。
オレが上手く行動しなかったから、何一つ解決出来ていない気がする。
オレは…桜は、政宗様と以前より仲良くなれたのだろうか。
「ねえちゃん、次はおらの村にも遊びに来てほしいだ。何もねぇけど良いとこだべ!」
「うん!きっと遊びに行くからね」
いつ現代に帰ることになるか分からないから、オレが行くのは無理かもしれない。
でも、約束を破るのは嫌だ。
桜、お前なら会いに行ってくれるよな?
いつきちゃんは、門の前まで見送りに来てくれた。
桜と離れるのが寂しいのか、大きな瞳が潤んでいる。
「桜ねえちゃんは、おらの憧れだ。おら、ねえちゃんみたいな大人になりたい。だから…、たまには…おらを思い出して…!」
「うん…うん!いつきちゃんのことは絶対に、忘れないよ」
可愛いことを言ってくれるじゃないか。
オレも、別れが辛くなる。
いつきちゃんは本当に良い子だった。
出会えたことに、感謝しなくちゃな。
「あのっ、政宗様…」
この人にはいろいろ言いたいことがあったんだけど、どうでも良くなってきた。
政宗様に向かって頭を下げる。
長いようで短かった三日間、思い起こせば失礼なことばかりしてしまいました。
「俺は、アンタにだけは負けないぜ」
「はは…頑張ってくださいね。ずっと、応援していますから」
「……princess」
政宗様の顔がぐっと近付いてくるから、幸村様に聞かれたくない内緒話か何かと思って見上げれば、
ちゅ、と小さな音が聞こえる。
同時に柔らかい唇の感触が…って。
(ききき、キスされた!?)
い、いや、セーフだろう!
政宗様の唇が触れたのは桜の頬。
唇にされていたら多分、失神していただろう。
「な、なんと…破廉恥な!!」
「…有り得ないんだけど。何てことしてくれちゃってんの!」
「政宗様、冗談が過ぎます」
「ねえちゃん…そんな…」
十人十色な反応。
幸村様はいつも通りだけど、佐助さんがマジ切れ寸前で、凄まじく恐ろしい。
いつきちゃんなんか、泣き出しそうだ。
そんな中、ひとりだけ平然としている政宗様が、何故だか清々しい。
「おいおい、これは南蛮の一般的な挨拶だぜ?kissぐらいで騒ぐんじゃねぇよ」
最後の最後で引っ掻き回してくださった。
さすがは伊達男だ。
佐助さんにゴシゴシと頬を拭われたオレは、苦笑するしかなかった。
でも、政宗様…桜のこと、好きになってくれたんじゃないか?
もちろん、友情的な意味で!
「忘れるなよ?俺とアンタはrivalだ。そして…We're best friend.you see?」
「政宗様…!」
「アンタには感謝してる。桜、Thanks!」
やったじゃん!ねえ桜、今の言葉聞いてた!?
政宗様が、ベストフレンドって、親友だって言ってくれたんだよ!
もう、氷のようだと蔑まれることは無い。
だって、友達になれたんだもん!
大変だったけど、奥州に来ることが出来て、本当に良かった。
オレも政宗様に感謝します、ありがとう!
END
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