感謝と感激



深く吸い込んだ空気は冷たくて、布団を被っていても震えてしまうぐらいの寒さを感じて、オレは目を覚ました。
ついに、冬到来?


「……、」

「…おはよう、桜ちゃん」

「おはよ…ございます…?」


視界の先は天井ではなく、にっこりと、明らかに作った笑顔の佐助さんが見えた。
何ですかその、苦笑いは。

寝起きで頭が上手く働かないオレは、ぼうっとしながら佐助さんを見ていた。
早く迎えに来てほしいとは思ったけど、何を話したら良いか分からない。


「……、幸村様は…」

「旦那なら庭に居るよ。昨日は一人で甲斐に戻って来るから、俺様驚いちゃった」


旅行先から地元に帰ったのか、幸村様。
距離を考えろ距離を!
いや…そこまで、思い詰めてしまったのか。

オレも桜も気にしていないのにな。
睡眠を妨害された訳でもないんだから。
幸村様は動揺していたし、信玄様に助けを求めたい気持ちは分からないでもないけど。


「話は聞いたよ。大変だったみたいだね」

「え、何が…」


幸村様と一緒の部屋で寝ちゃったこと?
それとも話はぶっ飛んで、政宗様とのことを言っている?
うん、大変でした。
夢の中でも体がだるいとか、有り得ない。
いつも以上に目覚めが悪いのは、桜の無茶による疲れがまだ残っているからだろう。


「…佐助さん?」

「痛い?腫れてはいないようだけど」


ぴたっ、と佐助さんの手が頬に触れる。
ひんやりした冷たい手、でも気持ちいい。
そう言えば政宗様に殴られたけど、全然痛くないな。
あの時は歯が折れるかと…、覚悟していたのに。

そう言えばオレ、気絶したんだっけ。
部屋まで誰が運んでくれたんだろう、小十郎さんか?


「あれ、佐助さん…、髪の毛濡れてませんか?」

「これは…、旦那が屋敷に居た女の子と雪で遊んでいたんだ。俺様も雪合戦に巻き込まれて…」

「雪が降ったんですか!?やっぱり!」


そうと分かったら、のんびり寝てはいられない!
初雪って、無条件でわくわくするものだ。
後にやって来る冬の厳しい寒さを知っていても、特別なのは初雪。
真っ白な冬と、一年ぶりの再会だ。

襖を開けて庭を見たら、一面の銀世界。
強烈な眩しさに目がくらみそうになってしまう。


 

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