闇に舞う雪



月明かりも差し込まない黒闇の森。
俺様直属の部下を数人、其処に集めた。

気配を殺し、部外者が近付こうものなら言葉を発せさせる前に息の根を断つ。
常に警戒心を捨てず、忍びであることを忘れない。


「…分かった。引き続き偵察を。俺様は明日、姫様と旦那の二人を迎えに行った後、そっちに向かうから」

「御意」


部下達は風を切って飛び上がり、闇夜へ消えた。
彼等から報告を受けたけれど、やはり状況は思わしくない。
近日中に、大きな戦が起こる。
早くに準備を進め、こちらが有利になるよう尽力しなくては。


(戦が始まるって言ったら桜ちゃんは泣いちゃうかな?姫様だったら…いや、相手によっては、桜ちゃん以上に…)


人が血と涙を流す。
俺様はこの手を赤に染め、落ちない汚れを塗り重ねていく。
このまま血を浴び続けたら、化け物にでもなってしまいそうだ。

それ以前に、忍びは人間ではない。
そう思い込み、自身に暗示をかける。
桜ちゃんには悪いけど、忍びは自分が人間であることを忘れなければ、こんな仕事やってられないんだよ。


「…才蔵?どうしたの?」

「長、報告があります」


屋敷の方から飛んでくる忍びの気配、真っ直ぐ俺様の方に向かって来ていたから動かずに待っていたんだけど。
真田の旦那に仕える忍び、霧隠才蔵。
才蔵は俺様が外に出ている間、屋敷を守る多くの忍びを統べている。
信頼が出来るから、俺様もよく才蔵に頼ってしまうんだけど、…報告って、何?


「先程、幸村様が屋敷にお戻りになられました」

「……え?」


ちょっ、旦那が!?
そんなの予想しなかったんですけど!



急ぎ屋敷に戻った俺様が見たものは、いつもの見慣れた光景、とは大分異なっていた。


「お館様、叱ってくだされ…!この幸村、許されぬ事をしてしまいました…」

「良い良い。…それで、お主は何をしでかしたのだ?」

「そそそ某…そのような事をするつもりは決して…!!」


才蔵が言うには、帰ってきて早々、旦那は大将に泣きつき(いつものように熱く叫ばないって事は重傷だ)、こんなやり取りが延々と繰り返されているそうだ。


 

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