姫様の夢 その6



(問題は、幸村様だよなあ…)


何でもかんでも破廉恥扱いする幸村様のことだ、今までも色恋沙汰には無縁で、ちょっと話題に出しただけでも真っ赤になって逃げていたんだろうな。
好きな人が出来ても気付かないんじゃ?
幸村様だって、いつまでも独身って訳にもいかないだろうに…。

部外者が口出しする必要は無いし、本気で恋愛している人に興味本位で意見するのはお節介だ。
桜やお父さんみたいに、影からこっそり応援するのが良いんだよな、多分。


「そうそう、桜は好きな人いるの?」

「……、」

「え、えっと…、今日知り合った子、いつきちゃんって言うんだけどさ、桜も見てただろ?そういう話題になってさ、それで…」


あ、あれ…!?
桜、急に表情が凍ったんですけど…オレ、何かまずいこと言っちゃったのか?

地雷だったみたいだな、この質問は。
まさかとは思うけど、失恋…したのか?
いや、有り得ない。
そもそも、桜は想いを他人に伝えられるような、器用な子ではない。
心の内を見せてくれないから、想い人が桜の気持ちに気付くことだって無いだろう。
それに、桜は自分勝手な恋は許されない立場にあるとわきまえているし、十分理解していたはずだ。


「いずれ、明らかになるであろう。私の口からは語らぬ」

「そ、そうですか…」

「私にも、人を想ったことはあるが、独眼竜とは想いの強さも比べものにならぬ…、もとより、叶わぬ恋だと承知の上であった」


憧れていただけ、ってこと。
遠くから眺めているのが精一杯だった?
だからって、想いの度合いが政宗様ほどじゃないとか、決め付けるなよ。

まどろっこしいことばかり言われても、オレには桜がどうしたいのか分からないよ。
とにかく好きだったんだろ!
普通の女の子のように、ドキドキしたりして、その人を見詰めてときめいたりして。

姫様って立場じゃ無かったら、桜は溢れ出しそうな想いを告げていたのだろうか?


(それは無いな、こう見えても好きな男の前ではタジタジになるんだぞ、きっと!)


…なんかモヤモヤしてきたぞ、変なの。
そう言えば、今日はチャーリー君に一回も触れていなかった。
オレ、甲斐に戻ったら思う存分チャーリー君の練習をするんだ、決意しました。

佐助さん、早く迎えに来てくれないかな。
オレと桜が今一番会いたいのは、佐助さんなんだからさ。



END

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